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【生命科学科】 生命科学科いきもの発見!#17 テオシント b

印刷用ページを表示する 2019年11月20日更新

 フィールド科学教育研究センターの圃場にはいろいろな植物が植えられています。ここで紹介するのはトウモロコシの野生種テオシントです。

 トウモロコシについては祖先野生種が何なのか長く論争が続いていましたが、近年ではメソアメリカ(中米)に自生するテオシント(teosinte: テオシンテ)が野生種であることが解明されています。さらには、形態の違いが5-6個の遺伝子によるものであることが解明され、これら遺伝子がどういうものなのかも研究されています。

 福永研究室では、講義科目「資源植物学」や「植物遺伝育種学」と関連して、見本用にテオシントを栽培しました。大まかにみるとトウモロコシと似ていますが、植物体が旺盛に枝分かれすることや、雌穂が小さく、種子が少ししかつかないところ、熟すと種子が落ちる点などが異なっています。野生植物から栽培植物への変化(栽培化:ドメスティケーション*)の遺伝学・進化生物学の研究の材料として教科書などにも取り上げられています。

 上の図がテオシントが成長していく様子、下の写真でトウモロコシ(上)とテオシント(下)の雌穂の違いが示されています。穂が出るのが遅く、庄原で種子が熟するかは微妙なところです。

 現在、研究材料として用いているわけではありませんが、このような材料を実際に講義などで見せて理解度の向上に努めています。

* ドメスティケーション(domesitication) とは、日本語では、植物では栽培化、動物では家畜化と訳されます。もともと野生植物では、種子の脱粒性や休眠性などがあり食べる部分が少なかったのが人間が栽培することにより自然変異の中から栽培に都合がよいものが選ばれ、現在、我々が植えている作物がうまれました。テオシントからトウモロコシの形態の劇的な変化は、栽培化のもっともわかりやすい例のひとつです。他にも路傍に生えているネコジャラシがアワの野生種であったりもします。イネの野生種も東南アジアやオセアニアなどに自生しています。動物では、イノシシがブタの野生種であり、オオカミがイヌの野生種です。野生種から栽培種へのドメスティケーションに関わる遺伝子の研究は、進化遺伝学のような基礎分野のみならず、育種学のような品種改良に関わる分野でも重要です(下に示す文献参照)。

teosinte
雌穂

 福永教授は、再編後は、生命環境学科生命科学コースで卒業論文を担当します。

 生命科学コースでは、再編後もこれまでどおり、動物・植物・微生物などを材料に、遺伝子、タンパク質、細胞生物学などの教育・研究を行います。

 旧・生命科学科教員の研究材料を紹介する、「生命科学科いきもの発見!」もご参照ください。

 また、来年度以降の生命科学コース教員メンバーについては生命環境学科生命科学コースの教員一覧を参照してください。


関連文献

テオシントについて

Fukunaga et al. (2005) Genetic Diversity and Population Structure of Teosinte.  

 Genetics. 169 : 2241–2254.

福永健二 (2009) トウモロコシの起源-テオシント説と栽培化に関わる遺伝子

栽培化(domestication)の分子遺伝学について

・ Doebley JF, Gaut BS, Smith BD (2006) The Molecular Genetics of Crop Domestication.

 Cell 127: 1309-1321

栽培植物の起源について

・ 中尾佐助 (1966) 栽培植物と農耕の起源. 岩波書店

・ ベルウッド P (2009) 農耕起源の人類史. 京都大学学術出版会

 

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