植物遺伝子工学研究室では、植物の有用遺伝子をキーワードに
次の3つの大きな分野に関連した研究を行っています。
. 有用遺伝子を用いた作物育種開発 〜遺伝子を組換える
. 有用遺伝子の機能解析 〜遺伝子の働きを調べる
。. 有用遺伝子の探索 〜遺伝子を見つける
. について
(1)有用植物の分子育種技術の開発と応用
形質転換法を用いた遺伝子導入による有用植物の分子育種技術の開発と応用を行ってい
る。 目下のところ、ユリ、シバ類における耐病性や耐乾燥性の付与をめざし、パーティク
ルガン(遺伝子銃)法を用いて耐病性や耐乾燥性遺伝子の導入による形質転換体作出とそ
の遺伝子発現の解析を行っている。
(2) 新品種育成による地域貢献
本学は、中国山地の山懐、典型的な中山間地域に立地している。最近の転作奨励によ
り、あらたな転作作物の創成が望まれている。当研究室では、備北地域の産官学による備
北バイオの里づくり推進協議会との共同研究で、バイオユリによる新産地育成を目指し、
シンテッポユリの産地化のための技術開発(大量培養・形質転換系の確立、遺伝子組換えユ
リの育成)を行っている。
(3)ユリにおける花成の機構の解明とその応用
シロイヌナズナで花成の機構が明らかにされつつあり、この機構に関与する多数の遺伝子
が単離されている。当研究室では、単子葉植物のユリを用いて花成の機構の解明(基礎分野
)や花成遺伝子を付与した開花期の異なる組み換え体、花器官形成の異常(花卉園芸分野へ
の応用分野) の取得などを目指した研究を行っている。
. について
(1)植物細胞壁構築関連酵素の単離と解析
植物細胞壁の構成成分であるペクチン質は、他のセルロース、リグニン等と異なりペク
チンメチルエステラーゼ(PME)酵素群により可逆的に硬軟化する。PMEの働きによりペクチ
ン質成分中のメチル化ポリガラクツロン酸のカルボキシル基が脱メチルされる。この時ペク
チン酸カルボキシル基は、2価のカチオンと結合し組織を硬化させる場合と細胞壁分解酵素
のターゲットとなり軟化する場合とがある。これらは、組織の生長・分化、果
実の成熟や老
化に深く関わっている。我々は、このPMEが組織硬化軟化の鍵酵素と考えこの酵素群の遺伝
子を単離し、遺伝子レベルでの発現解析を行うこと、さらにこの遺伝子の働きを応用して殺
菌処理による加工食品軟化防止などヘの適用を目指している。
(2)ペクチンエステラーゼ阻害因子遺伝子の探索
上記に関連して最近、PME 阻害因子(PMEI)の働きが明らかにされつつある。阻害因子の コントロ
ールによる細胞壁硬度の制御の可能性についてもあわせて検討している。とりわけ
食品加工の分野での応用の可能性が期待できこの方面での基礎研究を行っている。
。. について
(1)植物性決定因子の探索
植物の性決定機構の解明とその応用は、作物育種上極めて重要である。これまでの報告例
では遺伝子が実際に性決定機構にどのように関与しているかは断片的で、その全体像ははっ
きりしていない。我々は、いくつかの手法を用いてアスパラガス、ホウレンソウ、ホップな
ど雌雄異株植物を対象に性決定に関与する遺伝因子の単離を試みている。また、将来的には
遺伝子組み換え手法を利用し、雌雄をコントロールする可能性を検討している。
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