* 推薦図書

■詩集,詩の解釈
・茨木のり子『詩のこころを読む』岩波ジュニア新書,1979
・田中和雄編『ポケット詩集』童話屋,1998
・田中和雄編『ポケット詩集Ⅱ』童話屋,2001
・田中和雄編『ポケット詩集Ⅲ』童話屋,2004
→詩集は心を潤してくれます。小川は小説(特に長編)を読むのは苦手ですが、詩は大好きです。茨木さんの本は、詩の解釈の仕方を平易な言葉で説いたもの。『ポケット詩集』3冊は代表的な現代詩のほとんどを網羅しています。ここから気に入った詩人の個人詩集に進んでもらえればと思います。

■エッセイ
・佐藤初女『いのちをむすぶ』集英社,2016
→佐藤初女さんは「森のイスキア」の主宰者。映画『地球交響曲 第2番』で世に知られました。『いのちをむすぶ』は初女さんの生前最後の著書。研ぎ澄まされた精神性、霊性の美しさが、ひとことひとことに滲み出ています。

・平山郁雄『生かされて、生きる』角川文庫,1996
→平山郁雄さんはシルクロード・シリーズで有名な日本画家。被爆し、生死の境を彷徨ってから一心に平和を求め、やはり平和を求めて中国からインドに修行に向かった三蔵法師らをモチーフに、シルクロード・シリーズの制作に生涯を捧げました。「自身の体験から自ずと導き出されるあなただけのオリジナルな生涯のテーマを持ちなさい」とのメッセージは、小川の教育研究の大きな支柱となっています。

■ノンフィクション,ルポルタージュ
・石牟礼道子『苦海浄土 全三部』藤原書店,2016
・上野英信『追われゆく坑夫たち』岩波新書,1960
・上野英信『出ニッポン記』潮出版社,1977年(社会思想社〈現代教養文庫〉,1995年)
・岡村 淳『忘れられない日本人移民: ブラジルへ渡った記録映像作家の旅』港の人,2013
・宮本常一『忘れられた日本人』岩波文庫,1984
・山崎朋子『サンダカン八番娼館: 底辺女性史序章』筑摩書房,1972年(『新装版 サンダカン八番娼館』文春文庫,2008)
→「社会的弱者」「小さき人」「市井の人」「名もなき人」等と呼ばれる方々に取材したノンフィクション・ルポルタージュ。上に挙げた作品は読むのに辛いものが多いのですが、古き良き日本の原風景が描かれている『苦海浄土 全三部』『忘れられた日本人』の2作品は、絶対に読むことを薦めます。これからの私たち、私たちの社会が進むべき(還るべき)時空が、そこに描かれていると思っています。

■人文・社会科学
・内田 樹『寝ながら学べる構造主義』文春新書,2002
→構造主義の入門書。でもさすがに寝ながらは読めません。

・佐伯啓思『欲望と資本主義: 終りなき拡張の論理』講談社現代新書,1993
→資本主義は、人間の欲望を際限なく駆り立てる。読めば、資本主義を相対化できると思います。

・品田悦一『万葉集の発明: 国民国家と文化装置としての古典 新装版』新曜社,2019(初版2001)
→『万葉集』は、歴史上一貫して、国民文芸であったわけではない。日本の近代化の過程で、選ばれ、そのように位置付けられたものなのだ、という主張です。小川が大学2年生のときに出版され、「国語科教育法」の授業担当の先生から紹介されて読み、大きな衝撃を受けました。

・藤原帰一『戦争を記憶する: 広島・ホロコーストと現在』講談社現代新書,2001
→「歴史認識」は、出来事そのものではなく、それをどう捉え、解釈し、位置付けるか、ということ。高校應援團の同級生の紹介で読んだ本。

・ベネディクト・アンダーソン著, 白石隆・白石さや訳『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』書籍工房早山,2007
・エリック・ホブズボウム, テレンス・レンジャー編著, 前川啓治ほか訳『創られた伝統』紀伊國屋書店,1992
→この2書は、人文・社会科学における古典的名著。分断の進む21世紀の世界にあって、両書を読んでおくことは、地縁・血縁を越えた連帯の為に、有用だと思います。読むのにはやや苦労すると思うけれども、大学生の間に、ぜひチャレンジしてもらいたい。

▶日本語学・言語学
・井上史雄『日本語ウォッチング』岩波新書,1998
・鈴木孝夫『ことばと文化』岩波新書,1973
→高校生が読んでも楽しく読める日本語学、言語学の入門書。言葉の体系性、文化差、世代差など。「ことば」って、面白いんですよ。

・陣内正敬『外来語の社会言語学: 日本語のグローカルな考え方』世界思想社,2007
→小川の恩人である陣内先生のご著書。「さじ」と「スプーン」の意味の違いから、桑田佳祐の歌唱における外来語音の分析まで、幅広いテーマが扱われています。研究対象によって様々な研究手法がとられていて、定性的研究と定量的研究どちらも大切だということがよく分かります。

■自然科学
・福岡伸一『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書,2007
→自然科学がこの1冊ですが…。ともあれ、この本は、途方もなく面白いです。推理小説を読んでいるかのようなスリルと快感を味わえます。自分とは縁遠い分野の本を読むことも大切です。

■自己啓発,人格形成
・中野孝次『清貧の思想』文春文庫,1996(草思社,1992)
→小川は、大学入学当時、中国の老荘思想を卒業論文のテーマにしようかなと考えていました。あるがままを受け入れて、無為自然に生きる。未だに憧れるところもありますが、今は、より積極的に他者や世界と関わって貢献していくべきだ、使命を果たしていくべきだ、という人生哲学を持つに至りました。

・Stephen R. Covey著, ジェームス スキナー・川西茂訳『7つの習慣: 成功には原則があった!』キングベアー出版,日本語初版は1996(後,改版多数)
→小川が人生で初めて読んだ「自己啓発本」。高校の應援團の後輩から紹介されました。人格を磨き、優れた人格の他者と手を取り合い、刺激を与え合いながら相乗効果を生み、社会に貢献していく、というようなことが、懇切丁寧に書かれています。長いので、読み通すのには根気が必要です。

・V.E.フランクル著, 山田邦男・松田美佳訳『それでも人生にイエスと言う』 春秋社,1993
・V.E.フランクル著, 諸富祥彦・松岡世利子・上嶋洋一訳『「生きる意味」を求めて』春秋社,1999
・V.E.フランクル著, 池田香代子訳『夜と霧 新版』みすず書房,2002
→ナチスの強制収容所を生き延びた心理学者/精神分析学者フランクルの著述は、一度は手にとってほしいと思います(養老孟司氏も「若い頃にフランクルに触れろ」と言っています)。『夜と霧』は収容所での体験を描いたもの。『それでも人生にイエスと言う』は講演録なので読みやすい。若い頃は、「生きることに何の意味があるんだろうか」などと考えてしまいがちですが、フランクルの著述は、何らかのヒントを与えてくれるでしょう。

※図書の紹介のついでに、この際、映画と楽曲についてもいくつか紹介したいと思います。

□映画
・『いまを生きる』ピーター・ウィアー監督,1989
・『天使にラブ・ソングを…』エミール・アルドリーノ監督,1992
・『天使にラブ・ソングを2』ビル・デューク監督,1993
→学園ものは何度見ても涙が溢れる。音楽ものも同様。教員として現場に立ちたいと思う人にお薦めします。

・『地球交響曲』第1番~第8番,龍村仁監督,1992~2015
→隣人を愛し、自然と調和し、神を畏れ、神の声を聴きながら生きている人々の姿が描かれています。科学者も多く登場します。

・『この世界の片隅に』片渕須直監督,2016
→声高に反戦平和を叫んではいないのに、何よりも平和の尊さを訴えかけてくる作品。広島と呉が作品の舞台です。

□歌謡曲
・海援隊「母に捧げるバラード」1973
・二葉百合子「岸壁の母」1972(オリジナルは菊池章子,1954)
・古謝美佐子「童神」1997
・さだまさし「親父の一番長い日」1979
・美輪明宏「ヨイトマケの唄」1966
→家族がテーマの歌です。全ての人々に、家庭の平和、家族の団らんの場が与えられますように。

・中島みゆき「地上の星」2000
→以下、CDのブックレットより引用。「無名の人々に光を当ててください」というのがNHK「プロジェクトX」からの唯一の注文でした。細かい字でビッシリと綴られた分厚い企画書には、懸命に生きた無名の人々の記録。私が己れの無知を恥じながら、その記録に目を凝らして気づいたのは、この人々に「光を当てる」なんて出来ないということでした。光を放っているのは、まさに、この人々自身だったからです。心からの敬意を込めて、「地上の星」と名付けました。

□外国曲
・John Lennon「Imagin」1971
・Louis Armstrong「What a Wonderful World」1968
・Michael Jackson「Heal The World」1991
→私たち人類が霊的に成熟するための、祈りのような、福音のような歌。

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