タカハシさんがお薦めする本と映画です。
徐々に増やしていきますのでお見逃しなく。
(別に見逃したってどうと言うことはない?)
*お薦めのクラシック音楽はこちらです。→  クラシック



■ ダグラス・R・ホフスタッター: ゲーデル、エッシャー、バッハ
  ー あるいは不思議の環 
(白揚社)

例えば、「この文章は嘘である」という文章があるとする。この文章は真であるか嘘であるか?この文章が、 もし「真」であるなら、この文章は「嘘」であるということになる(この文章はそう言っているのだから)。 また、もしこの文章が「嘘」であるなら、この文章は「真」になってしまう(だって、本当のことを言っているのだもの)。 よってこの文章の真偽は確定できないことになってしまう。
 何だか言葉遊びをしているようだけど、ここに含まれている問題って結構大変なことなんだ。 例えば、バートランド・ラッセルは「プリンキピア・マテマティカ」で、集合論に関してこの問題で大いに頭を悩ませちゃったりしているわけ。 そして、ゲーデルっていう数学者が「不完全性定理」というやつで、この問題に関わるとんでもない証明をしちゃったのよ。そんでもって・・・  まあ、騙されたと思って読んでみて。人間の論理に関わる大変興味深い問題を提起しているから。僕が持ってるのは1985年に出た初版で、 定価が 4800円だから、今はもっと高いかも知れない。でも、その位の投資はする価値があるよ。


■ イタロ・カルヴィーノ: 冬の夜ひとりの旅人が
 
 (松籟社:イタリア叢書1)


カルーヴィーノの小説を読んだことがない? もったいないねえ。小説の面白さを満喫させてくれるよ。この小説は、いわば、小説についての小説、つまりメタフィクションになっているのでけれど、そう言って簡単に片づけてはいけない。さあ、じっくり楽しんでお読みなされ。


■ ロジェ・アンリ・ゲラン: トイレの文化史 (ちくま学芸文庫)

文庫本になってよかったね。トイレの変遷を資料を駆使して探求しています。うーん(こ)、真にためになる本じゃ。


■ 永井 豪: オモライくん (JICC出版局)

これは漫画です。孤児であり仲間とともに乞食を生業にしているオモライくんが学校やらなにやらで騒動を巻き起こすのですが・・・ オモライくんの姉貴分のおこもちゃんもかわゆく結構でした。物の豊かな現代の人間の生活に発する一つの問いかけ ー とか言っちゃうと詰まらなくなるのですが、現代ヒューマニズム文学の傑作(?)


■ トマス・ピンチョン: スロー・ラーナー (ちくま文庫)

トマス・ピンチョンの初期の短編集です。「V.」とか「重力の虹」等に挑戦する前にちょっと読んでおきましょう。ピンチョンの小説の原型みたいなものが窺えます。特に 'Entropy' は彼の作品を考える上で必読の作品です。このホームページの PAPERS etc. に 「隠喩としてのエントロピー:閉鎖系から開放形へ ー Thomas Pynchon の 'Entropy' を解読する」という論文が掲載されています。併せて読まれるととてもためになりますねえ。最近「ヴァインランド」の翻訳が出ました。これも面白いよ。


■ ジェイムズ・ジョイス: ユリシーズ (集英社、河出書房新社)

やっぱりこれは紹介しておかないとね。現代小説の原点。ちょいとマニアック。はまってしまうと大変だけど、ちょっとだけはまってちょっとだけオタクになりましょう。最近新訳が出始めて今が旬です。


■ ガルシア・マルケス: 百年の孤独 (新潮社)

とにかく面白い。今や現代文学の古典となっていますが、読んでない人は是非読んでみましょうね。


■ ジョン・バース: 酔いどれ草の仲買人 (集英社)

バースの小説はどれも面白いけれど、まあこれを推薦しておきましょう。エベニーザー・クックという歴史上実在する人物が主人公になっていますが、歴史とフィクションが入り混じってしまいます。歴史とは何か、虚構とは何か ー 何れが現実なりや?


■ 筒井康隆: 俗物図鑑 (新潮文庫)

痰壺研究家、性病研究家等々凄まじい面々が「梁山泊」に立て籠もり社会に反旗を翻します。面白いざんす。


■ ジュリアン・バーンズ: フローベールの鸚鵡 (白水社)

イギリス小説はモダニズムの後どちらかと言えば伝統的な小説の形に逆戻りしちゃった観があるけど、その中にあってジュリアン・バーンズは由緒正しいポストモダニストであると言えましょう。この小説も、テクストとは、歴史とは、世界を描くとは、そして小説とは何ぞやという問いかけを持つメタフクションざんす。といっても何かやたら難しい小説ではありませんよ。面白いからだまされたと思って読んでみたら。(でも僕よく人を騙すからねえ)「10 1/2で章で書かれた世界の歴史」(白水社)も面白いよ。(3/2 1999)


■ ウンベルト・エーコ: 薔薇の名前 (東京創元社)

初めから水洗図書に入れておくべき本だった。最近芥川賞を取った「日蝕」を読んで、多分「薔薇の名前」の影響を受けているんだろうと思い、それにしても何たる違いかと改めてこの小説の面白さ、素晴らしさを認識いたしました。中世イタリアの修道院を舞台に推理小説仕立てで物語は繰り広げられる。読者をドライブする筋立て、中世学者でもあるエーコの面目躍如たる中世の再現、随所にちりばめられた記号論的な含蓄、こんな面白くもあり知的興味も満たしてくれる小説はそうざらにはありませんぞ。二巻本でちょっと高いけどそれだけの価値があることうけあい。





□ スティーヴン・ダルドリー: めぐりあう時間たち

マイケル・カニンガムの小説 The Hours を映画化したもの。ヴァージニア・ウルフに扮するニコール・キッドマンが2003年度アカデミー賞最優秀女優賞を受賞。物語は、ヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」を核に、著者であるヴァージニア・ウルフ(1923年ロンドン:キッドマン)、読者であるローラ・ブラウン(1951年ロサンゼルス:ジュリアン・ムーア)、登場人物であるクラリッサ・ヴォーン(2001年ニューヨーク:メリル・ストリープ)の3人の女性の一日を描いて行く。それぞれの問題を抱える3人の女性の生き様が見事に描かれ、なかなかいい映画になっています。DVDを買ってしまいました。「ダロウェイ夫人」を読んでから見ることをお薦めします。



□ アンドレー・タルコフスキー: 惑星ソラリス

タルコフスキーは僕がもっとも好きな監督の一人です。スタニスラフ・レムの原作を見事に映画化しています。人間の心理の奥へ沈潜してみなしょう。その他、タルコフスキーのものでは、「ストーカー」(今はやりのとは全然違います)「白夜」(ドストエフスキーの小説が原作)、「鏡」、「サクリファイス」等がビデオで見られます。


□ スタンリー・キューブリック: 2001年宇宙の旅

キューブリックも僕好きなんだよね。最初、人類の祖先たちが登場しそこにモノリスという黒い石の板が出現するんだ。そいつが進化を促し人類の祖先たちは骨を道具として使い始める。彼らの一匹が投げた骨が棒状の宇宙船に置き換わって、時代は2001年に移行する。骨という原始的な道具が進化して宇宙船になるという訳だ。そして、2001年、月でモノリスが発見され、木星に向かって電磁波を発していることが分かる。そこで木星へ探査の宇宙船が派遣される。この、宇宙船を制御しているのが HAL9000 というコンピューターだ。このコンピューターどうやら感情とかも持っているらしい。道具文明もついに来るところまで来たという訳か。さて木星では何が待ち受けているやら・・・ 続きは見てのお楽しみ。ジョイスの研究もしているアンソニー・バージェス原作の「時計仕掛けのオレンジ」もお薦めだぞ。


□ リドリー・スコット: ブレード・ランナー

サイバーパンクスの傑作です。感情を持つに至ったロボットたちが「生」とは何かを考えさせます。ハリソン・フォード主演。


□ フィリップ・カウフマン: 存在の耐えられない軽さ

ミラン・クンデラの同名の小説を映画化したものです。原作が面白いので結構いい映画になっています。プラハの春がソヴィエト軍の進行によって打ち破られる時代を背景にして、政治的状況とその中に生きる人間の存在を問いかけています。尚、ミラン・クンデラの小説はとても面白いのでついでに読んでみましょう。


□ フランシス・コッポラ: 地獄の黙示録

コンラッドの Heart of Darkness を下敷きにし、場面をヴェトナム戦争最中のメコン川流域に置き換えてあります。バックグラウンドにかかるヴァーグナーの「ニーベルングの指輪」からの曲が印象的。


□ デイヴィッド・クローネンバーグ: 裸のランチ

ウィリアム・バローズの同名の小説が原作です。こんな小説どうやって映画にするのだろうと思っていましたが、結構やるもんですねえ。ドラッグがもたらす幻想、随所に登場するゴキブリが気持ち悪くて楽しいですねえ。


木靴の木

イタリア映画。小作農の生活を淡々と描いています。映画ならではの表現です。学生の頃見て感動したのですが、監督の名前も分かりません。それにビデオも出ていないので、どうしましょ。(BSでやったらしく卒業生が録画してくれました。めでたし、めでたし。)


□ フェディリコ・フェリーニ: サテリコン

フェリーニはやはり面白い。何を挙げてもいいのですが、最近、ビデオを買ったこの作品を挙げておきます。フェリーニ独特の世界が展開します。


□ ピエール・パオロ・パゾリーニ: 王女メディア

フェリーニを挙げたらやはりパゾリーニも挙げなければなりません。昔見た、「オイディプス」を原作とする「アポロンの地獄」は今は手に入らないのでしょうか。もう一度見たいのですが・・・(手に入れました)


□ ペドロ・アルモドバル: ハイヒール

アルモドバルの世界もおどろおどろしく僕は結構好きですね。「マタドール ー 炎のレクイエム」、「グロリアの憂鬱」等もいいですよ。


□ ルキノ・ヴィスコンティ: 地獄に堕ちた勇者ども

やはりヴィスコンティは落とすわけにはいきません。「ヴェニスに死す」、「ルードウィッヒ ー 神々の黄昏」、「イノセンス」・・・挙げるときりがありません。


□ ジョン・ヒューストン: ザ・デッド

ジェイムズ・ジョイスの Dubliners の最後の短編 The Dead を映画化したものです。なかなか感じが出ています。ダブリンの街でロケがしてあって懐かしかった。地味な映画ですがなかなかよく撮れています。


□ アナンド・タッカー: ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ

「ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ」を見てきました。イントロダクションに書いているように、僕はジャクリーヌ・デュプレのファンなのでとても面白く見ました。もちろんバックグラウンドには彼女の演奏が流れていて背筋がぞくぞくしましたよ。(March 2000)