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林ゼミ(医師)
林研究室(ゼミ)
♥ 地域で多様な個性の子どもたちを育む
小児科医や小児発達分野の作業療法士は,子どもの障害に目を向けるのではなく,子ども全体を見て,子どもたちが自分のいいところを生かして社会の中で豊かに暮らしていくことを目的として支援しています。そのためには,それぞれの子どもたちを理解して,何が好きでどうなりたいかという思いに寄り添い,力が発揮できる支援や環境整備が必要です。作業療法士は,保護者や地域の多職種と協働し,子どもたちを育む支援者の一員として専門性を生かして活躍をしてもらいたいと思います。
【学部のゼミ】
(2020年度の取り組み)
2020年度は,3名の学生が「附属診療センター受診中学生の予後の検討」というテーマで,附属診療センターに通っていた中学生の生徒たちがどのような高校生活を送っているかの予後調査を行いました。予後(支援のニーズやQOL)と関連する要因を「初診年齢」「小中学校の在籍学級」「進学した高校の種別」などとの関連性から分析しています。早期からその子どもの困り感が理解され,適切な環境で支援を受けることの大切さが明らかになってきました。
(これまでの取り組み)
1)卒業研究の進め方
林ゼミでの研究を希望する学生は,まず,「子どもの発達の理解や支援」に関して,疑問に感じたことや調べてみたいと思ったことをいくつかあげて,研究計画を考えます。その中で,実現可能な計画を選び,さらに詳しく計画を立ててデータを収集します。附属診療所に多くの子どもたちが通っており,研究に協力してくれています。研究テーマと直接関連しない場合も,小児科外来を見学して,附属診療センターで行われている子どものリハビリテーション・発達相談や地域連携による発達支援を学びます。地域の医療機関・療育施設や保育園と連携しているため,内容によっては協力をお願いしています。
2)卒業研究テーマ
今までの研究題目を表1に示します。様々なテーマについて,インタビュー・アンケート・実験などを通して研究を行いました。
表1 卒業研究の題目
年度 |
卒業研究テーマ |
2019 |
三原市放課後児童クラブの実態と支援者のニーズ |
2018 |
音の感じ方とその要因の研究 |
2017 |
療育施設ぽぽらの果たした役割と今後の課題 |
2016 |
発達外来受診中学生のQOLの検討 ~KINDL®中学生版QOL尺度を用いて~ |
2015 |
発達障害児を持つ保護者の発達支援医療に対する意識 |
2014 |
ADHD児童に対する薬物効果の客観的評価の検討 |
2013 |
保健福祉学部学生のメディア使用実態とネット依存に関する検討 |
2012
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発達外来利用児の特性と登校しぶりに影響する因子の検討 ~チェックリストと事例検討を通して~ |
2011
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発達障害児とその兄弟に対する支援 ~兄弟へのインタビューを通して~ |
2010 |
子育て支援体制と子どもの障害に関する妊婦の認識調査 |
2008
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加速度脈波解析による自律神経機能の測定の検討 ~日常生活・身体活動・精神活動をとおして~ |
2007 |
発達外来初診児の臨床的検討 |
2006 |
青年期のアスペルガー症候群の自立支援について ~ソーシャルストーリーを用いた関わりを通して~ |
3)県立広島大学保健福祉学部附属診療センター発達外来について
2019年度の外来統計を下記に示します。発達外来では,初診は幼児から中学3年生まで,原則として地域の相談機関(主に三原市子ども発達総合相談室・発達支援センター)からの紹介で来られます。初診のピークは,年長時で就学相談が主な目的になります。診療をして,それぞれのケースのニーズに合わせて附属診療センターで,相談・リハビリテーション・薬物療法などを行います。
【大学院のゼミ】
卒業研究と同様に,子どもの発達の理解や支援に関した研究を行っています。
2016年度修士論文 障害児通所支援事業所における作業療法士の現状と課題 A research on the actual situations and task of the occupational therapist in a day care center for children with developmental disorder
【研究テーマ】
発達障害児支援のための地域連携体制の構築をテーマに研究を進めています。
1)これまでの取り組み
2009年3月三原市発達障害者支援検討委員会において,医療,保健,福祉,教育,労働に関する関係機関が連携し,乳幼児期から成人期までの発達障害者に対する支援のあり方について提言しました。そこでは,発達障害児に対する基本的視点((1)将来の自立に向けた発達支援(2)ライフステージに応じた一貫した支援(3)家族を含めた支援(4)身近な地域における支援)を実現していくためには,行政関係者や専門職種のみで行われるものではなく地域全体の協力が必要であることと,地域のすべての子どもたちに対する子育て支援の充実が発達に課題のある子どもたちへの支援につながることを確認し,「気づく(早期の理解)」「つなげる(相談・連携)」「ささえる(保護者も含めた包括的な支援)」の3つの柱で地域の子育て支援ネットワークを構築していくこととなりました。
2016年から地域の多職種の支援者が集まって,大学で学習に苦慮している子ども多胎の支援を中心に研修を行いお互いに情報交換を行い,実践力を高めています。
2018年から改めて三原市発達障害者支援検討委員会が開催され,今までの取り組みに加えて,青年期の生きづらさをもった人たちの支援や保護者を支える取り組みなどが検討されています。
2)今後の目標•抱負
丈夫な子もいれば,病気にかかりやすい子もいます。育てやすい子もいれば,育てにくい子もいます。いろいろな個性の子どもとその家族が住んでよかった,今度は自分たちが他の人たちを応援したいと思える子育て支援の先進地域になるよう三原市と協働し,さらに,その支援の理念を近隣~他の地域の関連機関とも共有し,支援体制整備の輪を広げていきたいと考えます。
3)地域•社会と連携して進めたい内容
(1)子どもに関わる多くの地域の支援者が親子のニーズを広くキャッチし,早期に支援に繋げることができる連携体制の拡充
(2)親子が安心して気楽に相談できる相談機能(子育て中の家族が孤立しないように)の充実
(3)専門的な診断や支援が必要な子どもが適切な発達支援を受け,途切れることなく安心して成長するための地域の専門機関の連携体制の強化
(4)基盤の脆弱な家庭に対する地域資源への支援