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研究概要(事業者・一般の方向け)

 

*このページは、一般の皆様に向けた研究活動の紹介ページです。

 

 

1. 直近の主要な研究テーマ

 
 本研究室で取り扱う内容及び、直近の研究テーマは、以下の図のようになっています。大別して3つのグループがあり、7テーマを設定しています。

 

 

 

 

 

 

A. 実社会における多角的な分析と改善策の提案
 
 A-1. 環境面からみた木材の有効利活用に関する研究
 
 木材は適切な管理を行えば持続的に生産可能な資源である。しかし、我が国の森林資源は、齢級分布が大きく偏っており、直近では資源余剰の状態だが、将来的には資源不足に陥る可能性も無いとは言えない。また、近年は、環境面の意識の高まりから、利活用における環境負荷の削減も重要な課題のひとつといえる。木材について、環境負荷を削減しつつ、資源の利活用策を検討するためには、マテリアルフロー分析や、LCA手法を用いた環境影響分析が必要不可欠である。
  そこで、建築分野を中心に、我が国全体の木材利活用の現状及び将来の需給の動態を分析し、更には、利活用に伴う環境負荷分析を実施して、持続的かつ低環境負荷な木材利活用策を検討することを目的に研究を実施している。
  また、木材の利活用は、地域によって事情が大きく異なっている。そのため利活用策を実社会で適用するためには、地域の現状・課題を考慮することが欠かせない。そこで、広島県(特に北東部)を例にとり、地域におけるマテリアルフロー分析、環境負荷分析などを実施するとともに、その地域の自治体・森林組合・製材工場などに実態調査を実施して、より具体性のある活用策を検討することを目的として研究を実施している。
 
 A-2. 環境面から見た建築材料の有効利活用に関する研究
 
 建築分野は、大量に資源を消費し、大量に廃棄物を排出する分野の一つである。建築物の着工量は今後減少することが予想されるのをはじめ、着工量や廃棄物の発生量は時間の変化に伴って増減する。また、廃棄物は着工後、数十年程度を経過したのちに排出されるものであり、時間的推移の視点を含めた長期的な資源の利活用策を検討することは重要である。そのためには、資源消費や廃棄物排出量の時間的推移を含めた分析が必要である。
  そこで、過去から将来にわたる年次推移に着目し、建築資材の着工による資材消費量、建築物としての資材のストック量、解体後に排出される廃棄物量と再資源化可能量を明らかにすることで、今後の資源の利活用策を検討することを目的に研究を実施している。
 
 
 
B. 環境情報の発信(コミュニケーション)に関する研究
 
 事業者等が行う環境コミュニケーションは、実社会で適用する際、評価に手間がかかること、評価結果の見せ方などが難しいことがあること、などさまざまな課題がある。また、近年、Scope3だけではなく、環境フットプリントなど、評価内容が以前にも増して多岐にわたるようになっている。より多くの事業者が環境情報を活用できるよう、実施における課題などを整理し改善することで、一層活用しやすくなることが重要と考えられる。
 
 
 B-1. 建築物の評価における環境情報の利活用
 
 建築分野を例として、建物の環境情報の評価・発信に伴う課題等を整理し、それらから得たノウハウを元に、一層活用しやすくデータベース・評価手法等を改善することを目的として研究を実施している。具体的には、建築分野においてLCA実施経験者にアンケート調査を行い、LCAの一層の利活用を阻害する要因を捉えた。得られた課題を踏まえ、その改善策を検討している。
また、カーボンフットプリント・環境フットプリント等の実施における課題などについての検討も開始している。
 
 
 B-2. 環境政策におけるLCA利活用
 
 自治体の環境政策を例として、環境政策における環境情報の評価・発信に伴う課題等を整理し、それらから得たノウハウを元に、一層活用しやすくデータベース・評価手法等を改善することを目的として研究を実施している。具体的には、地方自治体において、その自治体が容易に入手可能なデータを用いて、できるだけ詳細にCO2排出量等を解析する手法を検討している。
 
 
 
C. LCAデータベースの維持・管理・拡充に関する研究
 
 C-1. 海外のバックグラウンドデータの推計手法構築に関する研究
 
 環境影響分析(LCA)を実施する上で、評価用データベース(原単位データベース)の構築は欠かせない。現状では国内全体を対象としたデータベースが開発されるにとどまっている。しかし、輸出入が盛んな我が国にとって、海外での影響を考慮した評価は必要不可欠である。
 既存の日本平均の原単位データベースを活用し、入手可能なデータ(統計データなど)を用い、可能な限り精度高く、海外や地域のデータを推計する手法を開発することを目指し、研究を実施している。
 
 C-2. バックグラウンドデータの品質と評価誤差に関する研究
 
  LCAの実施においては、評価者自らが評価に必要なデータを収集することが原則である。しかし、収集すべきデータ量は膨大になることが多く、評価に多大な労力を要することが多い。そのため、実務では、評価において影響が小さい部分にバックグラウンドデータ(環境負荷排出原単位)を用いて評価の効率化を図ることが一般的である。バックグラウンドデータの連鎖においては、評価目的に合致したデータを連鎖できればよいが適切なデータが見つからない場合や、有効範囲の合致状況などが十分に確認されないまま利用されることも少なくない。こうしたバックウラウンドデータの利用における留意点は、本来LCA実施者が十分な認識を持って利用すべきだが、十分な認識を持たないまま安易にデータが利用されているケースも少なくない。
  そこで、LCA実施におけるバックグラウンドデータの品質評価手法を開発し、有効範囲が合致していないデータを用いることによって生じる誤差の分析手法を開発することを目的として研究を実施している。さらには、これらの研究結果を踏まえ、産総研・産環協が開発するIDEAや、建築学会のLCA原単位データベースのデータ拡充などの方向性を提案する。
 
 C-3. 産業連関表を用いたバックグラウンドデータの開発
 
  LCAは、近年、カーボンフットプリントや環境フットプリント等、以前にも増して多様な評価が行われるようになってきている。そのためバックグラウンドデータも、そうしたニーズに対応し、多様な環境負荷物質の評価が可能なデータベースの構築が求められてきている。バックグラウンドデータベースは、その目的によって、我が国の中でも複数のデータベースが公表されている。例えば、産業技術総合研究所等が開発しているInventory Database for Environmental Analysis (IDEA)や、日本建築学会の建物のLCA指針に収録されているAIJ-LCAデータベースなどがある。また、LCA実施においては、評価対象とする年次のデータを用いることが理想であるが、多くのデータベースは特定の年次を対象として作成されていることが多い。例えば、建築学会のデータベースは、これまで、1990、1995、2005年版を公開しているが、直近の2005年データでも、すでに10年以上が経過しており、特に震災以降の電源構成の変化等の影響を考慮した原単位はできていない。そのような中で、2015年6月には、2011年版産業連関表が公表された。
 そこで、2011年版産業連関表を用いた新たな原単位データベースの研究・開発している。

 

 

 

2. これまでの主要な研究内容と成果の一覧
 
 
 これまでの研究内容と成果の一覧(主要な内容のみ)は、以下の表のようになっています。業績の詳細につきましては、本ウェブサイトの“業績”の各ページをご覧ください。

 

 

テーマ

研究概要

主な成果

実施時期
(所属)

主な成果物
2013年度末現在)

1. 環境影響評価のためのインフラ整備

(1) 評価用データベースの研究開発

① インベントリデータベース(IDEA)の研究開発

 LCAの効率的な実施のために必要不可欠なのが、バックグラウンドデータベースだが、積み上げ法を用いたデータベースは、依然としてLCA実施者を満足させるほど整備されていなかった。
 そこで、網羅性を有し、高い透明性、高い品質を有したインベントリデータベースIDEAInventory Database for Environmental Analysis)を開発することを目的として実施した。

・データの収集手法、データベースマネジメント手法などを提案した。
・これらのデータベース構築手法に基づき、約3700の世界最大規模のデータベースを作成した。

2008.42010.3
(産総研)

・国際3
・大会14
LCA計算ソフトに実装
・大部分がCFP二次データとして活用

② 海外DBの推計手法構築

 現在の我々の社会は、非常に多くのモノの輸入・輸出によって成り立っており、それらを評価するためには海外のデータベース構築が必要不可欠となってくる。
 そこで、網羅性を有する日本のIDEAから、簡易かつ可能な限り精度が高い、海外のインベントリデータベースを推計する手法を構築することを目的としている。

・エネルギー消費量、CO2排出量の推計手法について構築できた。
・中国を例に数十データを現地で収集し、推計データの妥当性を検証し、バックグラウンドデータとして利用するには十分な精度を有していることを示した。

2010.4~現在
(理科大
・県立広島大)

・国際1
・大会3

(2) 分析精度・誤差の評価手法構築

① 評価用データの品質評価手法

 LCAを実施する上で、インベントリデータの品質を十分考慮せずに、数値結果だけを比較分析するのは誤った解釈を導く原因になり得る。IDEAをはじめ、多くの積上げ型データは、データによって品質が異なる。
 そこで、評価用データの品質評価手法を構築することを目的として実施した。

・網羅性と収集度の2つの評価軸を提案し、簡易にデータ品位を評価する手法を構築した。

2008.42010.3
(産総研)

・論文1
・大会3
IDEAの品質評価に適用

② データベース利用における品質評価手法

 環境影響評価を実施する際、評価用データベースを用いることが多いが、評価したい品目と、整備されているデータの範囲が合致しないことが多い。
 そこで、データの合致性を判断する「適合性」を提案し、不適合データにより生ずる評価誤差を定量的に評価する手法を提案することを目的として実施している。

・適合性という評価指標を提案した。
・木造戸建住宅の資材製造にかかる環境負荷を分析し、大半が不適合データであることを明らかにした。
・不適合データを用いることによる評価誤差を十分に考慮した結果解釈が重要であることを示した。

2011.4~現在
(理科大
・県立広島大)

・論文2
・大会5

2. 社会における多角的な環境影響評価・分析

(1) 建築の資源循環・環境負荷低減策

① 建物の解体・処理における環境負荷低減に関する研究

 建設産業は、廃棄物排出量で全産業の約2割、埋立処分量で約3割を占めており、再資源化(廃棄物処理)は、大きな課題であった。しかし、当時は再資源化に関する実態が殆ど不明で、実態を踏まえた建物設計・解体等の在り方など、包括的な資源循環の在り方が十分に見出せていなかった。
 そこで、建築における資源循環の在り方を提案することを目的として、再資源化だけではなく温暖化などの視点も含めた環境影響評価を実施した。

・全国規模の実態調査を行い、殆どの処理施設で異物混入が大きな課題であることを明らかにした。
・異物の種類ごとに、組成を捉え、処理に伴う埋立処分量やCO2排出量の観点から異物が及ぼす影響を捉えた。
・廃棄物処理における課題を踏まえ、解体実態調査を行い、材料別・部位別の異物の発生源について整理した。
・解体調査を基に、解体方法等の差異を考慮した発生廃棄物の性状分析を行い、組成や環境負荷の観点で影響が大きい異物を明らかにした。

2001.42008.3
(大学院)

・論文6
・国際3
・大会25

② 建築廃棄物のマテリアルフローの構築

 建築廃棄物が及ぼすインパクトは非常に大きく、効率的にその影響を削減していくためには、現状の建築廃棄物全体の影響を大観することが重要である。その上で、及ぼす影響が大きい部分から負荷削減の方向性を探る必要があると考えられる。
 そこで、建築廃棄物を対象に環境面の評価を考慮した、廃棄物処理や資源の有効利用の方向性を見出すことを目指し、処理の実態把握や環境負荷削減可能性について検討した。

・建築廃棄物のマテリアルフローを構築した。
・廃棄物の種類・処理技術ごとに、新規製造時・リサイクル時のインベントリ分析を行った。
・以上を踏まえCO2排出量を推計し、その削減可能性を定量的に示した。

2006.42008.3
(産総研)

・論文1
・大会2

③ 木材の有効利活用に関する研究

 木材は適切な管理を行って生産すれば、永続的に利用可能な材料だが、我が国の木材資源は短期的には余剰傾向だが将来的には不足する可能性がある。
 建築分野における木材の利用実態や、木材を有効活用することによる効果を、資源量だけではなく他の環境側面も含めて、定量的に明らかにし、低環境負荷に資する利活用方法を提案することを目的とし検討を行っている。直近では、我が国全体だけではなく、地域における利活用策の検討も実施している。

・建築を中心とした木材のマテリアルフローを年次別に構築した。
・ライフサイクルにおいて環境面で影響が大きいプロセスを明らかにした。
・更に、各プロセスの実態調査を20施設程度実施し、環境負荷低減のための課題点などを整理した。
・将来の木材消費量や木くずの排出量について試算した。

2008.4~現在
(理科大
・県立広島大)

・論文1
・大会9

④ 建築材料の有効利活用に関する研究

 建築物の着工量は今後減少することが予想される。また、廃棄物は着工後、数十年程度を経過したのちに排出される。建築分野は大量の資源消費・廃棄をする分野であり、時間的推移の視点を含めた長期的な資源の利活用策を検討することは重要である。
 過去から将来にわたる年次推移に着目し、建築資材の着工による消費量、建物としてのストック量、解体後の廃棄物量と再資源化可能量を明らかにすることで、今後の資源の利活用策を検討することを試みている。

・時間的推移を考慮した建築分野における資源の消費量と、廃棄物の排出量に関する動態を試算した。

2013.4~現在
(理科大
・県立広島大)

・大会1

(2) 建築・住宅における省エネルギーに関する研究

 我が国のエネルギー消費において、住宅が占める割合は大きく、その実態把握は必要不可欠である。更に、震災による電力不足から、特にピーク時の電力供給が逼迫し、夏・冬期の節電が求められている。
 そこで、東京近郊の集合住宅において、大規模な消費エネルギーデータの収集・分析を実施し、これらのデータを活用し季節別、月別、時刻別などの視点から住宅のエネルギー消費実態を捉えること、震災の影響を考慮した変動要因を明らかにすることを目的として検討している。

・数棟の住棟におけるエネルギー消費実態を分析し、消費総量から給湯・空調などの用途別内訳を推計する手法を提案した。
・省エネ・節電のための留意点などを指摘した。

2010.42014.3
(理科大)

・大会8

(3) 廃プラスチックの国際資源循環評価に関する研究

 日本で消費された物品がリサイクルを目的としてアジアの近隣諸国に輸出されるケースが増加傾向にあった。こうした二次資源の国際循環はアジア諸国の急速な経済成長とともに急増する資源需要を緩和する一方、国内での循環政策にひずみを生じさせる懸念があるとともに、不十分な環境管理のもとでリサイクルが行われた場合には環境負荷の増大が懸念された。
 そこで国際資源循環に関する評価手法の枠組みを構築し、廃プラスチックを例に、開発手法の有効性を検証するとともに、リサイクル制度設計のための知見を得ることを目的として実施された。

・評価に必要な国内外(日本および中国が中心)のインベントリデータ(例:電力、輸送、石炭採掘、廃棄物処理、化学工業製品など)を現地機関とともに30データ程度収集し、評価用データベースを構築した。
・特に電力については、年次差・地域差なども分析し、評価における留意点などを示した。
・またそれに基づき、国内外の環境影響分析を行った。

2006.42009.3
(産総研)

・論文6
・国際2
・大会1