各プロジェクトの目的・概要これまでの調査の概要成果の報告・写真など活動

越境科研・トヨタ財団調査報告一覧

調査者氏名 主要調査地 調査期間 資金名 調査報告
1 上水流久彦 台湾東部・先島諸島 2008年12~2009年1月 トヨタ財団 台湾東部の花蓮市にて市長、市長秘書、及び先島諸島との交流に関心がある人々にインタビューを行った。
また先島諸島でも交流促進推進者並びに華僑に調査を行った。花蓮市は越境したビジネスを切望する声が強かった。一方、先島諸島では台湾との交流をいかに進めるか、自治体で温度差があった。
写真:「花蓮市役所にある与那国町事務所の看板」
2 角南聡一郎 沖縄本島・石垣島・与那国島 2009年2月 トヨタ財団 沖縄本島にて文献資料の収集をおこなった。
石垣島では名蔵集落の訪問、八重山毎日新聞社・松田氏との打ち合わせをおこなった。
また、与那国島では島全体の概観を観察し、島でどのように歴史や民俗文化が語られているのかを検討した。
3 王田 達夫 与那国 2009年2月 トヨタ財団 与那国空港と花蓮空港を結ぶチャーター便が初めて就航した。これは本来、船で与那国と花蓮を結ぶ予定であったが、天候不順のため最終的に飛行機となった。
花蓮からの観光客にとっては、オプションの情報や、与那国のレストラン状況などが十分に伝わっていない点があった。与那国町側も準備をしていたにも拘わらず、客の自由行動が多く不満を招いていた。
4 越智 郁乃 先島諸島・石垣島・与那国島 2009年3月 トヨタ財団 石垣島と与那国島において先島台湾間の観光旅行に関する調査を行った。
与那国における調査は、内閣府「地方の元気再生事業」の一部として行われた与那国町の試みである花蓮与那国間チャーター便に関して、①台湾側からの旅行者、②与那国における旅行者受け入れ側(宿、観光施設)、③仲介者(行政、旅行社、離島活性コンサルティング)、④与那国側から台湾への旅行者、の4方面において参与観察、聞き取りを行った。
その結果、与那国台湾間の航空機を利用した旅行が今後発展する可能性と、事業継続や業者・行政の対応に関する住民の不安が明らかになった。
また石垣において、旅行社、旅行者への聞き取りを行った。
その結果、台湾への移動手段に関して、施設・出入国管理の観点から、先島内でも船舶か航空機かという利用利点が異なることが明らかになった。
先島全般に、台湾への移動手段の確保が大きな課題となっている。
写真:「台湾からの旅行者を歓迎する垂幕」
写真:「出国手続きの説明」
写真:「特産品フェア」
写真:「直行便飛行機」
写真:「出国を待つ旅行者」
写真:「交流事業経過報告会」
5 上水流久彦 台湾東部・与那国 2009年3月 トヨタ財団 与那国町の試みとして、花蓮市と与那国町の間にチャーター便が飛ばされた。
チャーター便について双方の思い、ズレを探るために調査を行った。日本としての与那国を求める花蓮の観光客と、与那国としての特色を売りたい地元業者との間でズレが一部存在した。だが、直接的な接触は、与那国の人々の間に、「普通の人」として台湾人の印象を生み出した。
資料:「八重山毎日新聞掲載文章」
業績
6 黄 智慧 沖縄 2009年3月 トヨタ財団 沖縄県立図書館、県議会図書館等で資料の収集を行った。
県議会図書館では特に政治(史)に関するデータを得た。また那覇市、及びその近郊で台湾と沖縄の交流に関して、インフォーマントに対して聞き取り調査を行った。
7 松田良孝 台湾彰化市・台北市 2009年7月 トヨタ財団 石垣島で没した台湾出身男性の遺骨を、その遺族が郷里の彰化市へ戻すことになったため、遺族に同行して仮納骨までの様子を取材した。
八重山に移住した台湾出身者はそのまま八重山に定着するケースが多いとみられるが、この男性のケースは特異なものと考えられる。本納骨は2010年春に予定されており、これにも同行して、執筆につなげる計画である。
写真:「那覇空港で遺骨を抱く曾孫」
8 村上和弘 対馬市 2009年7月~8月 科学研究費補助金 対馬市厳原町において、「厳原港祭り対馬アリラン祭」の参与観察および関係者へのインタビューを行った。
また、対馬市上対馬町・上県町において、日課航路を含む島内・島外交通の経緯と現況についてインタビューを行った。
同調査から、日韓交流に関する感覚は地域間でかなり温度差があり、それは歴史的経緯、とくに交通路の変遷と関係があるとの暫定的結論を得た。
写真:「厳原港祭り対馬アリラン祭」
写真:スタッフは手弁当で自分たちの「祭り」を支えている
写真:島外からの注目は、「交流」意識のずれを拡大させる一因でもある
業績
9 上水流久彦 対馬市 2009年7~8月 越境科研 対馬市で実施されるアリラン祭を調査した。島外の一部では、韓国との関係を強調した祭りと認識されることもあるが、地元では昔ながらの「港祭り」という認識もある。
実際、祭りにおいて韓国関係のものはごく一部で、地元サークルの成果発表会の側面も強い。
島外と島内の認識の違いは、祭りの分析において考慮すべきである。
写真:「対馬と韓国の近さを示す旗」
10 中村八重 釜山・対馬 2009年7・8月 越境科研 対馬へ観光にくる韓国人へのインタビューを行った。
対馬に対して韓国人観光客は気軽に行ける日本という感覚を持っているが、対馬独自の自然・歴史に高い興味を持っているわけではなく、朝鮮通信使を再現した祭にも関心は低かった。
写真:「朝鮮通信使行列」
11 森田真也 石垣市 2009年8月 越境科研 石垣市において、琉球華僑総会の関係者に台湾からの移動の歴史的概要と現状についてインタビューを行った。
土地公祭等についても調査を行った。および名蔵御嶽、共同墓地の巡見調査を行った。
写真:「台湾系移住者の共同墓地」
12 中村八重 東京 2009年8月 越境科研 東京へワーキングホリデイでやってくる韓国人学生を対象にインタビューを行なった。
ワーキングホリデイは留学より手軽な語学習得の手段となっている。
彼らは韓国人ネットワークの中で生活する傾向が高い一方で、日本人との交流を望んでいる。
13 上水流久彦 台湾東部・先島諸島 2009年8月 越境科研 まず台湾東部における先島諸島の印象を探った。
基本的に「名前は聞いたことがある」、「姉妹都市である」というレベルであり、観光地としての認識は広がっていなかった。
したがって、ビジネスができる基盤とはなっていなかった。ただ、市の上層部や一部の市民にはビジネスチャンスとしての先島諸島を見ている動きはあった。
他方、先島諸島ではそれぞれの自治体で違いがあった。ビジネス型の交流の意識が強いのは石垣市であり、先島・台湾東部の交通基盤確立を進めてきた与那国は親善交流型の意識が強いようであった。
宮古島市は、現在、台湾との交流そのものを強く推進する雰囲気はなかった。ただ、市民レベルの交流は存在している。
14 角南聡一郎 台湾・台北・東海岸 2009年9月 越境科研 台北にて文献資料の収集をおこなった。花蓮にて、慈済大学・李文茹先生と打ち合わせをし、蘇澳、羅東周辺にて主に日本時代の建造物や道具類がどのような状態で現存しているのかを調査した。
資料:八重山毎日新聞掲載文章
15 田里千代基 花蓮市 2009年9月 トヨタ財団 与那国町と花蓮市のビジネスを促進するために花蓮市等の関係者と主に話をした。
民間ベースで何が出来るかがひとつの課題となった。
16 野入直美 石垣市 2009年10月 トヨタ財団 沖縄県立八重山高校で、出前授業「八重山-台湾の国際社会学」を4クラスにおいて講義し、アクション・リサーチを行った。
台湾系華僑の高校生、その友人で、郷土の書籍を執筆したいと志している日本人生徒、地域の特性を焦点化した八重山の教材開発に意欲をもつ社会科の先生方と出会い、今後の協働に向けての話し合いをもつことができた。
資料:「八重山毎日新聞掲載文章」
17 玉城 毅 八重山 2009年11月 トヨタ財団 戦前における八重山から台湾への出稼ぎに関する資料収集及び聞き取り調査を行なった。
特に出稼ぎ者が多かった竹富島の戦前の状況を調査し、実際に台湾に渡航した経験がある3名の方に話を聞いた。また、石垣島在住の糸満系猟師の方々に、戦前から戦後にかけての糸満猟師の動きについて聞き取り調査を行なった。
写真:「ウミンチュの親子」
18 上水流久彦 石垣市 2009年12月 トヨタ財団 2010年3月に予定している台湾東部と先島諸島の交流活性化のためのシンポジウムについて調整を行った。
石垣市関係者、現地トヨタ財団プロジェクトメンバーと話し合いを行い、3月27日に石垣で実施することになった。
石垣市、八重山毎日新聞社の協力を得られる予定である。また、『やいま』での特集号についても南山舎の上江洲社長と打合せ行い、具体的なスケジュールを決定した。
シンポジウム案内参照
19 王田達夫 蘇澳鎮 2009年12月 トヨタ財団 3月に石垣市で予定しているシンポジウムについて、旧知の前鎮長などと話を行った。
また、その関係から現在の鎮長とも話をした。現職の参加が難しいが、前鎮長の参加は可能な感触であった。
20 中村八重 台北・淡水 2009年12月~2010年1月 越境科研 日本に留学経験のある人々を対象にインタビューを行った。植民地時代に日本の大学へ 行った経験のある人、現職の日本語学科の教授、専門学校を出た人、大学生に日本への 留学経験と日本に対する認識を聞いた。
日本へ留学することが難しかった世代と、日本 大衆文化に接している若い世代とは認識の差がみられた。
写真:「台湾総督府だった建物」
21 西村一之 台北市・宜蘭県蘇澳鎭 2009年12月~2010年1月 越境科研 台北市の国立中央図書館台湾分館にて、台湾東部漁業地に関する文献調査を行った。
また宜蘭県蘇澳鎭南方澳にある南安国民中学校に附設されている「漁業文史室」を訪問、展示物の観覧と設立経緯や所蔵物に関するインタビューを実施した。
加えて、「宜蘭県討海文化保育協会」の協力を得て漁業関係者を中心とした臨地調査を実施、漁業の概略と尖閣諸島付近出漁の経験などについてインタビューを行った。
写真:「沖縄移民の戦後居住跡地」
22 角南聡一郎 沖縄本島・石垣島 2010年1月 越境科研 沖縄本島・名護市にてセメント瓦工場の見学、セメント瓦研究者・名護市役場の比嘉氏と面会、石垣島・竹富島でのセメント瓦・赤瓦など民具資料の調査。
また同時に、各博物館所蔵の画像資料などで、戦前の履物についての調査を実施した。
写真:「名護市セメント瓦」
写真:「本部町セメント瓦」
23 越智 郁乃 沖縄(那覇、石垣) 2010年2月17日~24日 越境科研 本調査では、沖縄県八重山地域と台湾間の交渉実態についての基礎的な文献の収集と聞き取り調査を行った。
沖縄県の行政機関及び法務省入国管理局において、出入国者の資料を収集するとともに観光者数に関する資料を収集した。
また、旅行者や観光に関する業者にも聞き取りを行い、現在の先島から台湾、台湾から先島への旅行者の実態と、戦後の旅行実態の変遷についても調査を行った。
その結果、近年の台湾からの旅行者層の変化が明らかになり、先島地域における台湾イメージが変化しつつあるという知見を得た。
写真:「石垣市内・百円ショップの案内表示①」
写真:「石垣市内・百円ショップの案内表示②」
写真:「石垣市内・百円ショップの案内表示③」