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県立広島大学
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地中応力を反映した余震活動モデルの改良:地震予測に向けて

取り組み内容

 大地震(本震)が起きた後これに続いて発生する余震数は、本震発生からの経過時間にほぼ反比例して減少していくことが知られています。しかし実際には余震が引き起こす余震(二次余震)が存在するなど、複雑な時間変化を示します。

 こうした余震活動の推移を再現するために、地震発生を司る摩擦の特性から応力と地震発生の関係を表すモデルが導入され、様々な工夫が試みられています。

 このモデルの従来のものでは二次余震の影響が考慮されていませんでした。そこでこれを考慮する改良を施しました。一例として2004年10月に起きた新潟県中越地震の余震データに適用した結果を示します。従来モデルでは本震発生から単純に1日あたりに発生すると期待される地震数が減少していくだけですが(図1(a)、緑線)、二次余震の影響を入れられるよう改良したことにより複雑な余震発生の様子が作り出せています(赤線)。さらに改良したモデルが実際の余震発生によく合っていることも分かります(図1(b))。

 このようにモデルを工夫することで、より現実的な余震活動を再現することが出来ました。ところでこの例では背景となる地中の応力が時間一定で上昇すると仮定しています。しかし、大地震後、その周辺域ではゆっくりとしたすべり(余効変動)が起きることが知られており、これに対応した背景応力の変化も取り入れられるような工夫を現在試みています(図2)。このようにモデルの改良を積み重ね、現実的な地震の起こり方に近づけていくことで、将来的には地震予測に繋がると考えています。

図 1
図1: (a)モデルから期待される2004年新潟県中越地震のマグニチュード3以上の余震数。
赤線は二次余震を入れられるよう改良したもの。
緑線は従来の二次余震を入れていないもの。
(b) 実際の余震発生(青線)との比較。
比較し易くするため、ある時刻までの余震発生数(累積余震数)を縦軸にしてあります
(Iwata [2016, Pure and Applied Geophysics]の図を改変)。

図 2
図2: (a)地中の応力が時間一定で上昇する場合と、
(b)ゆっくりとしたすべりに対応した応力上昇に対応した応力上昇の場合とでの
モデルから期待される余震の発生数の概念図。
前者の場合は二次余震の影響がなかった、あるいは1回だけあった場合(灰色破線)
と2回あった場合(赤実線)とが最終的に一致しますが、後者の場合はそうではありません。
これは二次余震の影響が永久に残ることになります。
実際の地震活動はそうではないので、この点に対する工夫・改良が必要です
(岩田[2021, 統計数理]の図を改変)。
担当者大学教育実践センター 准教授
岩田 貴樹(いわた たかき)
Takaki Iwata研究者紹介ページ

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