太陽光発電には大きな関心が集められていますが、あまり一般には普及していないのが現状です。それは、太陽電池の効率が低いことと価格が高いことの2つの理由により、発電コストが一般電源に比べて非常に高いことが原因になっています。そこで、高効率で低コストな太陽電池研究を行っています。

@ 高効率化に向けて (プラズモニクス)

写真            
 貴金属ナノ微粒子は、光照射下において局在的な表面プラズモン共鳴を誘起することが知られています。このとき微粒子界面に形成される電場は、照射光のそれに比べて数十倍の強度を有しています(左図)。これを電場増強効果といい、pn接合部の空間電荷層などで光吸収係数が増大して光電流の増加が期待されます。本研究では、この現象を利用することで高効率なプラズモニクス太陽電池を展開しています。  右図は、貴金属ナノ微粒子に電磁波が照射されたとき、表面プラズモン共鳴が誘起される様子です。微粒子の直径が電磁波の波長に比べて十分に小さいとき、この微粒子は電磁波により一様な電界を受けます。このとき微粒子表面では局在型表面プラズモンと呼ばれる自由電子による集団振動が顕著になり、照射光はある周波数でこのプラズモンと共鳴します。これを局在型表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance; LSPR)と呼び、例えば直径60nmの金微粒子では照射光波長が約520nm、40nmの銀微粒子では波長約410nmの照射光でLSPRが観察されます。このとき微粒子はDrudeの自由電子モデルに従って誘電分極して、微粒子界面で光電場と呼ばれる非常に大きな電界が誘起されます。本研究では、太陽電池における電荷分離をこの光電場中で行わせることで高変換効率を目指しています。


A 低コスト化に向けて (プリンタブル)

写真   従来のシリコンや化合物半導体を利用した太陽電池の製造は、高度に制御された半導体プロセスを利用するために製造コストが非常に高く、この原因により現在の一般電源と比べて発電単価が大幅に大きいのが現状です。これが太陽光発電の普及を妨げる要因の一つとなっています。本研究では、製造コストが低くてより簡便なスクリーン印刷法によるプリンタブル太陽電池の開発を進めています。



B 目指しているフレキシブル太陽電池

写真   社会からの期待に応えることができる理想的な太陽電池を目指して、 私たちは高効率化を目指したプラズモニクス、そして低コスト化を目指したプリンタブルの融合による実現を進めています。 また同時に、従来のガラス基板を利用せずに薄い樹脂シートを基板とした軽量で折り曲げ自在なフレキシブル太陽電池の実現を最終的な目標としています。これはカーテンやブラインドとしての利用、スマートフォンや電気自動車のボディーに貼って発電するなど、従来の大型で重量のある据え置き型の太陽電池とは全く異なるものです。このようなフィルム型の太陽電池が高効率で低コストであり、何れは一般に広く普及されることを目指して研究を進めています。