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【生命科学科】入浴剤開発秘話―荻田研 b

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年6月8日更新

生命科学科の荻田教授の研究室では、地元の素材を活用した入浴剤の開発を行っています。この春、新しくオープンした江の川カヌー公園さくぎの入浴施設でそれが早速使用され、各種メディアでも既に紹介されています。

入浴剤の開発にあたり、荻田教授や大学院生の後迫さんが苦心したのはどのような点だったのか、また技術的にはどのような工夫が背景にあったのか、専門的・科学的な視点から少し掘り下げてインタビューしてみました。

Q:開発で最も苦労されたことはなんですか?
(荻田)計画通りにプロジェクトを進めるために何をすべきかを明確に示す必要があったことです。これには3つのことを意識しました。第一に、「地域の特徴を活かした製品開発」という明確な目標設定。第二に、地元の野草等をどのように使うのか、単に研究していくだけではなく、大学外のプロジェクトメンバーと結果を共有しながら進めること。そして第三に、地域戦略協働プロジェクトにおいては、重要な成果物として、研究に携わる学生と地域とのつながりの強化が期待されますが、これにも十分な注意を払いました。

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実験中の大学院生の後迫さんと荻田教授

Q:それをどのような工夫で乗り越えたのですか?
(荻田)まず、プロジェクトを4期に分け、それぞれの達成目標を明確にしました。これにより、大学外のメンバーとの情報共有が容易になり、また学生の意識も高まりました。次に開発過程についてですが、まず材料に関しては、「エコロジカルな」方向性を強く意識しました。俎上に上がった材料は、ヒノキの製材過程に出てくる葉や皮、ユズ加工やワイン加工の残渣、里山に自生するヨモギやクマザサなどなど、多岐にわたりました。まず年間を通じて利用可能なヒノキを使うことにしましたが、これらの過程では、研究室の専門である、植物カルスを用いた植物細胞工学研究の成果を活用できました。

Q:最も苦労が報われたと感じたのはどのときですか?
(荻田)「地元のとのつながり」を研究に展開していく過程に、学生諸子が深くかかわることができたことですね。また研究面では、彼らに入浴剤というものを研究の言葉に「翻訳」すること、これは大学の研究者としてもやりがいのある作業でした。例えば「材料の入手と加工」は、植物中の「含水率変化の測定」という作業に「翻訳」できます。また「植物エキス抽出」とは、「抽出溶媒の検討」作業に置き換えられます。「入浴・芳香剤の評価」については、安全性も含まれてきますので抽出エキス中の「微生物検定」ということになります。

Q:大学院生の後迫さんにお聞きします。最初プロジェクトを聞いた時、どのように感じましたか?
(後迫)そうですね…実はそれまで私は「地域貢献」や「地域活性化」について具体的なイメージを持っていませんでした。しかし先生からプロジェクトの課題や目的を聞いたとき、はじめてこれらについて実際に手に取ることのできる事例として捉えることができました。それによって、当事者意識が芽生えたように思います。また、自分たちの卒業研究が実際に社会で使われる可能性が目の前に提示されましたので、やはりやる気がでました。

Q:実際に開発を担当してみて、どう感じましたか。また、作業として難しかったのはどういった点ですか?
(後迫)入浴剤と聞いて、最初ハーブ湯のような植物素材を袋に詰めて湯船に浮かべればおしまい、というイメージを持っていました。しかし実際には、入浴施設や水質に関する条例や法規、入浴剤の形状(固形、粉末、乳液)など、考えるべきことが非常に多いことに驚き、苦労しました。現在、保存性や安全性の観点から、「微生物検定」を始めていますが、多くの実験が全く初めての経験で、実は現在も苦労しています(笑)。

Q:今後の「科学面の」課題は何ですか?
(荻田)当面は植物エキスの「芳香性」を追求・活用していくことを計画しています。その際、地元の天然素材にとことんこだわっていきたいと思います。天然素材といっても、単一化合物として精製したものを使用するということではなく、複数成分のバランスに注意を払いながら、混合物として優れたものを開発したい。しかしそれだけでなく、入浴施設での実試験、すなわち実際の使用者の感覚も大切にしたい。これは有機化学で言う「官能試験」という作業になってきます。まだまだやることは山積みですが、大学ならではのアカデミックな発想と研究力を生かし、これまでになかったような製品を開発していきたいですね。

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江の川カヌー公園さくぎでの植物エキス抽出作業

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