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6月29日(金曜日)に情報マネジメント專攻主催の教員発表会に橋上 徹准教授は,「連結範囲規制を巡る諸課題と探求 -連結範囲規制の網羅性の欠如への対応を中心として-」について発表しました。
近年の企業は、著しくその活動を多様化させ、また、国際化しています(中小企業も同じ)。これは、国内における急速な少子化・過疎化等、また、規制緩和等に伴う外国企業を巻き込んだ熾烈な競争等が背景にあるものと考えられます。企業はこれらの活動への対処のため資金調達を行いますが、その典型は所謂、証券市場への上場です。上場等をすると、「有価証券報告書」を作成し、財務局へ届け出、投資家等への開示を行います。企業の国際化、及び/または、多角化に伴う、企業グループ全体としての業績を把握し、資金拠出の資金拠出判断特に上場企業等における投資家等が、当該企業の財政状態・経営成績等を判断するための業績の指針を示すものが「連結財務諸表」であり、2000年度から有価証券報告書の主たる財務諸表となりました(親会社の個別の財務諸表は連結財務諸表の添付資料とされました)。連結財務諸表が制度化された頃は、子会社と言えば、通常、株式会社を指し、株式会社の最高意思決定機関は株主総会であるので、ある会社が、他の会社の議決権過半数の議決権を保有すれば親子関係が成立し、その子会社は、連結財務諸表の一部を構成することとなります。その後、金融技術の発達により、企業が保有する資産を流動化・証券化することが多くなったものの、日本も含め、ケイマンやパナマなどで利用されることの多いSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)を設立し、それを介することも多くりました。SPCへの資金拠出は、SPCは通常Charitable Trust(慈善信託)という寄付団体に一度資金拠出をし、議決権がないため、ケイマン島に設立されたSPCを連結していない可能性も指摘されています。また、投資事業組合という議決権のない器を利用し、連結財務諸表に売上・利益計上するという複雑なスキームを利用した事件がありました。これらを含め、戦後の経済あるいは社会を震撼させた事件は、会計粉飾、特に、連結範囲規制の網をくぐったものでありました。本講演では、80年ぶりに改正された信託法や公益法人改革に伴う連結範囲規制の課題など、連結範囲規制の課題と課題解決へのアプローチについて考察しました。