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【学長メッセージ】コロナ禍で学んだ皆さんに贈る言葉 1:オンライン教育について

印刷用ページを表示する 2021年2月10日更新

ロナ禍で学んだ皆さんに贈る言葉

1:オンライン教育について

 

県立広島大学 学長 中村健一

 2020年度はまさに試練の年でした。近年,経験したことのない新型コロナウイルス感染症のパンデミックに世界中が支配され,感染者数も現在1億人を突破し,未だに収束の兆しは見えていません。この1年,本学も従来とは大きく異なった大学運営を取らざるを得ませんでした。全ては,4月からの授業を学内では行えないという状況を余儀なくされたからです。以前よりオンライン授業を一部実践していた教員や,ICTに詳しい教職員からのアドバイス,そして大学教育実践センター,学術情報センター教職員らの努力を集約して本学は,原則オンラインによる授業の徹底を図りました。全ては「学びを止めない」という本学教職員の意欲の表れなのですが,様々なトラブルを生じながらの試行錯誤の連続でした。学生の皆さんや保護者の方には,様々な不安や不便な思い,そして辛い思いを強いてしまっていることを大変申し訳なく思っております。

 

 オンライン授業の運営には多くの反省があります。特に授業理解度の検証が不安になると,どうしても課題を出して確認したいという共通の教員心理に由来するのでしょう,全国的にもオンライン授業に派生した「課題地獄」という言葉が生まれましたが,本学も例外ではありませんでした。学生アンケートには課題提示の多量さを切々と訴える多くの苦情が寄せられました。また教員のICT活用技術に個人差が大きいことも指摘されました。オンライン研修会を何度か設けて,技術の習得に努めるような努力をしましたが,まだまだ不十分なようです。そうした中にあって学生の皆さん,本当にお疲れさまでした。そして,よく頑張ってくれました。前期の終了時に行った,オンライン授業に関するアンケートに,「概ね満足」,さらには「今後もオンラインを活用した授業の継続を希望する」という声が過半数以上あったことは,オンラインに関わった努力が報われた嬉しい結果と私達教職員一同,受け止めています。特に後期授業においては,学生自らがアンケートをとり,オンライン授業改善の指摘をしてくれたことや,ICTスキルに卓越した学生から積極的な技術提案があるなど,さすが本学の学生であると嬉しく思いました。

 

 コロナ禍は,大学教育を問い直す上での良い機会にもなりました。一つは,オンライン授業は今までの授業をオンラインに置き換えたものではない,知識の習得や理解においては,工夫次第では既存の授業を越えることもできるということも学ぶことができました。具体的には授業内容をオンライン化に付随した機能を用いて映像としてファイル化することによって,反転授業あるいは反復復習を容易に行う機会を学生に提供することができました。またチャットやグループディスカッションを通じて,今まで以上に,学生との対話活動が容易になり,オンライン授業はアクティブラーニングを有効に機能させる手段になりうる可能性を持っていることが学生アンケートや教員による履修成績評価から示されています。

 

 そしてもう一つは,大学は授業のためにのみ存在するわけではないということも実感として受け止めることができました。クラブ活動を含め,クラス内の多様な人と人が,言葉はもちろん,対面を通して顔の表情や視線を含めてお互いの情報をやりとりする,その中で新たな自分の気づきと相手への気遣い,こうした人間としての成長はオンライン授業では育成できないという確信です。昨年10月17日(土)にマツダ スタジアムにて開催した,地域交流イベントとしての「県立広島大学 建学100周年PRデー」の催しは,100名余りの学生参加に限定されましたが,生き生きと会話する学生同士の表情,皆一斉に拍手する応援姿,一日のみのイベントでしたが,久しぶりに学生と一緒に同じ空間にいて,リアルな表情や態度に直に接したことが,インパクトある思い出として私の心に刻まれています。実際に触れ合うことによって得られた「つながり」が「連帯感」を生み,「共感」と化し,やがて「本学への愛着・帰属意識」の形成につながる,これはオンライン授業のみでは醸成できないことを強く意識しています。4月からの2021年度の授業形態は,コロナ感染症収束の状況に依存することは間違いありませんが,対面かオンラインかではなく,この2020年度の努力と経験を活かし,両者の強みの統合によって,より付加価値の高い教育環境の創出,すなわち,オンラインを組み込んだ「新たな県立広島大学版教育」が展開できると信じています。

   教職員そして学生の皆さんの絆がその力になります。100周年を経た県立広島大学の教育が,さらなる100年への教育創造に新しい一歩を踏み出す時,2020年度のコロナ禍はまさに本学にとっての輝かしいターニングポイントになるに違いありません。

2021年2月10日