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所属:生物資源科学部 生命環境学科 生命科学コース 職位:教授,生物資源科学副学部長,生命環境副学部長 学位:博士(理学)
研究室:県立広島大学庄原キャンパス3703号室
E-mail:yagit@(@の後にを付けて送信ください)
研究内容:https://researchmap.jp/toshikiyagi
研究室Web:https://www.pu-hiroshima.ac.jp/p/yagit/lab-molmach.html
細胞が運動する仕組み、特に、細胞がもつ運動器官である鞭毛・繊毛の運動機構を調べています。主に、緑藻コナミドリムシを使って実験をしています。けなげに運動する彼らの動きをみるのは飽きませんが、この研究はヒトの病気の研究にも役立っています。
鞭毛・繊毛運動の分子機構、鞭毛・繊毛の構築機構、モータータンパク質の動作機構、細胞骨格微小管の構築機構、植物の根こぶ病菌の運動および感染機構
鞭毛・繊毛は美しい波動運動を行う細胞の運動器官です。たとえば、高等動物の気管にある繊毛は、呼吸の際に体内に入りこむ細菌やウィルス(もちろん、新型コロナウィルスも!)などを捕捉・運搬して排除するのに役立ちます。私たちが研究に用いているコナミドリムシは2本の鞭毛を使って優雅に泳ぎますが、この生き物では、鞭毛のいろいろなパーツがなくなった突然変異株を得ることが簡単です。それぞれ特徴的に運動性が低下した変異株と野生株の間で、鞭毛の動き方の違いや、内部構造の違いを調べると、鞭毛運動における各パーツの役割がわかります。ヒトでは、各組織の細胞がもつ鞭毛繊毛の異常により様々な病態をもつ遺伝病(繊毛病と言います)が現れますが、コナミドリムシの変異株の研究はヒト繊毛病の基礎研究として役立っています。
一方、鞭毛繊毛研究は農業分野でも役立つと予想されます。広島菜は広島特産の葉物野菜で、漬物材料としてよく知られています。広島菜の根にコブを作らせ植物を弱らせる土壌伝染病(根コブ病)をご存知でしょうか? 根コブ病は突発的に蔓延し、その根本的な防除法はまだありません。菌はその鞭毛の運動により土壌中を移動しますので、その運動を止めればこの伝染病は防げるはずです。最近、私たちは、根コブ病菌の駆除を目指して、その鞭毛運動の研究も始めています。
鞭毛・繊毛はともに美しい波動運動を行う細胞の運動器官です。たとえば、精子の鞭毛は細胞の移動に、気管の表面にある繊毛は呼吸の際に体内に入りこむ細菌やウィルス(もちろん、新型コロナウィルスも!)などの異物を運搬して排除することに役立っています。鞭毛・繊毛は見た目が異なりますがともに共通の内部構造をもち、運動機構も同じであると考えられています(以下では、繊毛と略記します)。
クラミドモナスと呼ばれる緑藻は、繊毛のいろいろなパーツがなくなった突然変異株を得ることが容易です。私たちは主にこの生物を使って繊毛を研究しています。変異株と野生株の動きの違い、内部の構造の違いを調べれば、繊毛運動における各パーツの役割がわかります。ヒトもクラミドモナスと同じ形の繊毛をもち、そのパーツもほとんど同じです。従って、クラミドモナスの繊毛研究はヒト遺伝病の研究に直結する必須の基礎研究となっています。このような視点で研究を行った卒業生の多くは、大学院へ進学したり、医療・薬品系の企業へ就職したりしています
鞭毛・繊毛をもつ微生物の中には、農産物だけでなく水産物に被害をもたらす例が知られています。たとえば、瀬戸内海で以前より問題となっている赤潮の原因となるプランクトン(シャトネラ)も鞭毛をもちますので、我々の繊毛の研究は赤潮の発生機序の研究にも役立つのではないかと考えています(ひろしまビジョン、農林水産業(10)と関連)。一方、家畜がかかる伝染性の病気に、鞭毛・繊毛をもつ未知の微生物が関与している可能性もあります。今後、そのような病原性微生物を探索する研究にも携わりたいと考えています。
鞭毛、繊毛、微小管、ダイニン、キネシン、クラミドモナス、ボルボックス、太陽虫、根コブ菌