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【生命科学コース】 動物生殖生理学研究室(山下准教授)のD2藤内慎梧君が第23回日本IVF学会で優秀発表賞(柳町隆造賞)を受賞

印刷用ページを表示する 2020年11月5日更新

動物生殖生理学研究室(山下准教授)のD2藤内慎梧君が2020年10月31日から11月1日に広島市で開催された第23回日本IVF学会で優秀発表賞(柳町隆造賞)を受賞しました。

タイトル:マウスにおける鉄欠乏は卵胞発育不全による雌性不妊を引き起こす

〇藤内慎梧1,河端茜1,島田昌之2,山下泰尚1

1県立広島大院総合学術,2広島大院統合生命科学

 

鉄欠乏は妊娠期の胎児の発育や正常な出産に影響を与えると知られていますが,卵巣機能への影響,特に卵胞発育期,排卵期への影響は明らかになっていません。そのため,胎児形成期における鉄剤投与の有効性は示されていますが,これから子供を欲しい母親への卵巣機能のコンディション向上を目的とした鉄剤投与については全く考慮されてきていません。当グループでは卵胞発育期のブタ卵胞液に,鉄の輸送タンパク質のトランスフェリンが血中の4倍以上もの高濃度で蓄積することを見出したことから,卵胞発育期において,卵胞を構成し,卵子の質の向上に必須の体細胞(顆粒膜細胞や卵丘細胞),および生殖細胞(卵子)へなんらかの影響を及ぼしていると考えられました。そこで,本研究では,低鉄飼料を給餌した鉄欠乏モデル(Low Fe Diet;LFD)マウスを用いて,鉄が卵巣機能へ果たす役割を検討しました。

 その結果,鉄が十分に含まれる通常飼料を給餌したNormalマウスでは発情休止期,発情前期,発情期,発情後期と6日平均で規則的な性周期が認められましたが,LFDマウスの性周期は発情休止期から全く進行せず,妊孕性注釈(1)が全く認められませんでした。LFDマウスの卵巣は卵胞注釈(2)発育の初期で卵胞発育が停止すること,この結果,排卵数が低下し,卵子の質も著しく低下することを明らかにしました。さらに,低鉄飼料を給餌することにより生じた妊孕性の著しい低下は,鉄を補給することで完全に回復することを明らかにしました。

 現在,不妊治療に訪れる患者の9割は鉄不足であることが報告されています。このため,本研究結果は,不妊患者の中には貧血により卵巣機能が損なわれている可能性があることを示唆しています。さらに,鉄分不足が原因で不妊症となる患者の損なわれた卵巣機能は,鉄剤の補完により完全に回復する可能性が高いことを示唆しています。科学的意義に加え臨床応用も可能な研究成果である点が高く評価され,受賞に至りました。

動物生殖生理学研究室 准教授 山下泰尚

注釈
(1)妊孕性:男性と女性の夫婦またはカップルが子供を妊娠し,出産する能力のこと。
(2)卵胞:卵子が含まれる卵巣内の構造体。最外層に体細胞である顆粒膜細胞が存在し,顆粒膜細胞が一部突出して卵丘細胞が形成される。卵子は卵丘細胞に覆われる。

藤内写真1

生殖分野で知らぬものがいないハワイ大学名誉教授の柳町隆造先生の名前が冠された栄えある賞を受賞しました。

藤内写真2

第23回日本IVF学会学術集会会長で広島HARTクリニック院長・理事長の向田哲規先生から賞状,メダル,賞金,柳町隆造先生の論文集を授与されました。

藤内写真3

学会入り口での記念写真

藤内写真4

学会終了後,宮島近くの牡蠣小屋でお祝いです。

今回の内容は生命科学コースの学びの先にある大学院総合学術研究科の話題になります。
藤内君は山下先生指導の下、学部3年生からの一貫した研究が今回の大きな成果につながりました。
このような先輩の活躍に続くことができるよう、学科・コースの学生の皆さんも研究室で一生懸命研究に打ち込んでいって欲しいと思います。