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【生命科学コース】生命科学コースの山下教授が第66回日本卵子学会学術集会においてシンポジウムで発表しました。
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2025年6月4日更新
2025年5月31日から6月1日に広島市で開催された第66回日本卵子学会学術集会(@広島コンベンションホール)において,生物資源科学部生命環境学科生命科学コースの山下教授がシンポジウム2で招請講演を行いました。(発表演題:体内の卵胞発育・排卵環境から体外成熟培養環境を考える)

体外成熟培養(In Vitro Maturation: IVM)法とは,発育途中の卵胞から卵丘細胞卵子複合体(Cumulus-oocyte complex: COC)を採取し,受精可能な成熟卵子まで体外培養する技術で,現在家畜の増産やヒトの高度生殖補助医療に応用されています。しかし,既存のIVM法により作出した成熟卵子は,受精後の発生能が低いことが問題となっています。山下教授と広島大学大学院統合生科学研究科 教授の島田昌之 博士は,これまでIVMにより作出される成熟卵子の発生能が低い原因は,発育途中の卵胞から未成熟なCOCを採取したのち,十分な成熟過程を経ていないCOCの卵子の核成熟を強制的に行う点にあると考え,IVMの前に卵胞発育過程を模倣したpre-IVMで培養することが重要であることをこれまで報告してきました。本シンポジウムでは,体内において,共に下垂体由来の卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)がそれぞれ誘導する卵胞発育過程,排卵過程において発現する遺伝子とこれらにより活性化される代謝経路を示し,グルコース代謝が卵子や卵丘細胞などに与える影響について示しました。また,2023年において,ブタCOCを用いて開発した新規pre-IVM-IVM法から(pre-IVM時に鉄輸送タンパク質のトランスフェリン(TF)に鉄イオンが結合したHolo-TFを添加し,その後のIVM時にはHolo-TFを添加しない)(Tonai et al., Reprod Biol Med, 2023),ブタにおける研究を基盤としたヒト卵子の新規pre-IVM-IVM法の開発の重要性について提言しました。