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題名: 細胞老化に伴う特徴的な変化からみるSenolysis/Senostaticsの可能性
月刊 細胞 Vol. 55(2), 2023, p32-35
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生命科学コースの齋藤研究室(細胞機能制御学研究室)では「老化」、「皮膚」、「がん」をテーマにした研究を行っており、「老化」に関しては、細胞レベルの老化(細胞老化)に特に注目し、老化細胞の特性解析やその制御に関する研究を進めています。今回の総説では、これまでの研究成果の一部を紹介すると共に、今後の老化研究の課題や展望について述べています。
【概要】加齢に伴いヒトの体内には老化細胞が蓄積し、この老化細胞の蓄積が様々な疾患に関わっていることが近年、明らかとなってきました。そこで、体内に蓄積した老化細胞を人為的に除去(Senolysis)したり、老化細胞が分泌する炎症性物質分泌を抑制すること(Senostatics)で、老化細胞を排除、鎮静化し、健康増進へつなげることを狙いとした研究が注目されています。このSenolysisやSenostaticsといった“老化細胞の制御”を実現するためには,まずはターゲットである老化細胞の特徴や周囲に及ぼす影響を知り,その特性に応じたアプローチを試みる必要があります。今回の総説では老化細胞解析における齋藤研究室のこれまでの取り組み(ストレス抵抗性変化,他細胞への影響,メラニン産生への影響)についてデータを交えながら紹介すると共に、今後のSenolysis/Senostaticsの可能性について論じています。この研究にはこれまで多くの卒論生(青山さん、大和さん、今本さん、江川さん、渡辺さん、金井君、田邊さん、水島さん、甲斐さん、船戸さん、岩本君、木村さん、角尾さん、福島君、中村君)、修論生(中和君、上月君、秋山君、福田君)らが関わっており、先輩から後輩へと研究テーマを引き継ぎながら、老化細胞の解析/制御に関する研究の発展・深化に貢献してくれています。
本研究の一部は,JSPS科研費17K01862および20K11627の助成を受け,実施されたものです。
【生命科学コースについてもっと知りたい方(学べる内容、研究、卒業生の進路など)】
図 若い細胞と老化した細胞(ヒト線維芽細胞)の様子
老化細胞(右)では細胞の形態が変形、肥大化するとともに、老化細胞マーカーの薄青色染色像が多数認められる(矢印の細胞) 水島ひかるさん(卒業生)撮影・染色