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【生命科学科】菅研究室の論文がScientific Reportsに掲載されましたb

印刷用ページを表示する 2018年4月3日更新
flag 菅研究室の論文が国際誌Scientific Reportsに掲載されました。

Hiroshi Suga & Todd Miller
Src signaling in a low-complexity unicellular kinome
(日本語タイトル:単細胞生物の単純化されたSrcリン酸化シグナル)
Sci Rep 2018 8:5362. DOI: 10.1038/s41598-018-23721-8

Src(サーク)遺伝子は、動物において細胞の増殖制御を始めとした様々なメカニズムに関わる遺伝子です。しかしその制御がうまくいかなくなり、暴走を始めるとがんの原因となります。実際、この遺伝子は最初に発見されたがん原遺伝子(突然変異を起こすことでがんを引き起こす遺伝子)としても有名で、その発見と研究は1966年と1989年の2度のノーベル賞の対象となっています。

Srcは、動物のからだの中で細胞を増やしたり、細胞の形や機能を変化させて分業体制を構築したりします。つまり動物の多細胞システムを作り上げる重要な働きをしています。そのため、多細胞である動物にしか存在しないと長い間考えられていました。しかし菅研究室で培養しているクレオリマックスという生物は、単細胞ですが、なんとSrcを持っています。しかしその機能は全く分かっていませんでした。更に興味深いことに、クレオリマックスは、動物で通常Srcの働きを抑える(つまり発がんを防ぐ)役割を果たすCskと呼ばれる遺伝子を持っていません。Cskなしで、どのようにしてSrcの働きを抑えているのかという点も大きな謎でした。

菅研究室では、ニューヨーク州立大学のミラー博士と共同でその謎の一端を解明しました。研究の中で、筆頭著者の菅准教授や所属学生であった時安鴻二郎さんと村上周平さんは、(1)クレオリマックスのSrcは、細胞が成長して大きくなっていく過程に関わって働いていること、そして(2)クレオリマックスではCskの代わりにCfrPTP-3という別の遺伝子が、Srcの活性スイッチをONにするリン酸を取り除くことによりその活性を抑えていること、の2点を明らかにしました。菅研究室のテーマである「動物はどのようにして多細胞化を果たしたのか」という進化学上の謎に迫るのみならず、「そもそも動物はなぜがんになるのか」という疑問にも答えようとする成果です。


クレオリマックス細胞が分裂し、アメーバを放出する場面を捉えた動画。放出されたアメーバは固着して胞子状に変化した後、成長を始める。

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少しわかりづらいかもしれませんが、発表された論文の図をそのまま掲載しています。クレオリマックス細胞において、Src遺伝子が細胞の成長に関わり、そしてその働きは通常CfrPTP-7という別の遺伝子によって抑えられていることを示しています。