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【発表論文】
日本語訳:高濃度のビタミンCは、口腔異形成ケラチノサイトよりもヒト舌癌細胞に対して優先的に持続的な増殖抑制効果を発揮する
掲載雑誌名: Biochimica et Biophysica Acta - General Subjects, 2026, 1870(7):130957.
著者: Yasukazu Saitoh, Takuya Ishikawa, Mai Yamamoto, Arisa Oki, Haruka Makino, Manato Takeda, and Yu Ozeki
【解説】
細胞機能制御学研究室(齋藤)では、副作用の少ない抗がんアプローチを目指す一環として、正常細胞には影響が少なく、がん細胞に対して有効な手法の探索(副作用の少ない抗がんを目指した研究)に挑戦し続けています。今回の論文(電子版先行公開中)は4月の研究成果に続き、高濃度ビタミンC (VC*)に着目、口腔がんの一つである舌がん細胞に対する効果と新たなメカニズムについて報告しています。
がん全体からすると舌がんの発生頻度はそう多くはありませんが、外科手術後に嚥下、発音障害など、予後の生活の質を低下させることが多いことが知られています。本研究では比較的容易に高濃度ビタミンCを投与できる器官として口腔に着目、また、なるべく非がん組織を温存できるようなアプローチになるのではないかとの期待のもと、研究室の学部生および大学院生を中心に様々な実験が進められました。その結果、高濃度ビタミンCが舌がん細胞に対し、細胞外での酸化ストレスの発生を契機とした細胞老化を誘導することで持続的な増殖抑制効果を発揮していることを新たに示すと共に、異形成細胞(非腫瘍性)と効果が異なる点やその原因となるメカニズムの一端を明らかにしました。
培養細胞を用いた基礎レベルの研究成果ではありますが、こういった地道な研究の積み重ねが、がん治療の後押しへとつながることを期待しています。本論文には研究に貢献した細胞機能制御学研究室の博士課程前期修了生および学部卒業生6名(石川さん、山元さん、沖さん、牧野さん、竹田さん、小関さん)が共著者として名を連ねており、研究は多くの学生たちの地道な検証の積み重ねによって支えられています。なお、本研究の一部はJSPS科研費20K11627, 23K10922および県立広島大学研究成果発表助成の助成を受けて実施されたものです。
*今回の論文ではアスコルビン酸、正確には還元型ビタミンC(L-ascorbic acid)を指しています。


舌がん細胞と非がん細胞のアクチン繊維(赤)と核(青)染色像
VC処理によりがん細胞のアクチン繊維*の発現(赤)が影響を受けています。一方、非がん細胞ではそのような影響はみられていません(2枚目の4枚パネルの図)。こういった違いが、がん細胞への優先的かつ持続的な増殖抑制に関わっているのではないかと考えています(論文では他にも様々な観点から解析しています)。
*アクチン繊維:Gアクチンと呼ばれるタンパク質が重合したもの。細胞骨格の1つであり、細胞の運動や分裂などに関わっています。