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【生命環境学科生命科学コース】卒業生の声-研究にたずさわる3人の同級生

印刷用ページを表示する 2022年7月11日更新

  ここまで 福永研究室山下研究室稲垣研究室阿部研究室齋藤研究室と庄原キャンパス 生命科学コースの卒業生の声をお届けしてきましたが、今回は研究室ごとではなく、同じ年に入学した3人を紹介したいと思います。
 今回ご紹介するのは、福永研究室から広島大学の大学院に進み農研機構のポスドクを経て、国立研究開発法人・量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所で主任研究員をされておられる山谷浩史さん、田井章博教授(現在・徳島大学)のもとで博士課程まで進まれて、岡山県立大学の助教をされている岩岡裕二さん、達家雅明教授(この3月にご退職・現在名誉教授)のもとで修士まで進まれて、現在、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社で人事の仕事をされている藤井幹子さんです。

山谷浩史さん(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所主任研究員、生命環境学部生命科学科卒業) 

山谷さん1

山谷浩史さん(兵庫県立東播磨高等学校卒 2011年3月生命環境学部生命科学科卒業) ​​

Q 今はどういうお仕事をされてますか?

 私は現在、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST)の高崎量子応用研究所に所属しています。主な研究は量子ビーム(ガンマ線, イオンビームなど)照射により植物の突然変異を誘発させ、得られた突然変異体集団の中から、目的とする有用な突然変異体(例えば収量が多い、食味が良い、病気に強い)を単離し、その原因遺伝子を特定しています。将来的には得られた突然変異遺伝子のDNAマーカーを作成し、品種改良へ利用できれば良いと考えています。これまでの経歴ですが、私は県立広島大を卒業してから、広島大学大学院の博士課程前期に進学しました。2年間民間の種苗会社で勤務した後、再び広島大学大学院に入学し、博士号を取得しました。その後、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)で博士研究員をした後、今年度から現職に着任しました。

Q 庄原キャンパスでの学生時代はどういうふうに過ごされましたか?

 県立広島大学ではテニス部に所属していました。ラケットよりも酒瓶を握っていた記憶です。研究室配属後には共同研究先で、葉の老化誘導時にも緑色を保つ突然変異体の原因遺伝子の単離とどのようにしてその現象が起きているかを明らかにしました。毎日遅くまで実験をし、数えきれないほど失敗しました。イネの遺伝子組換え体の作成は半年近くかかり、ポジティブな結果を得られたことは今でも印象的です。

 

Q 庄原キャンパスで学んだことは今のお仕事などにどのようにいかせてますか?

 私は学部の時には特に遺伝子に興味を持ち分子生物学・分子遺伝学を中心に勉強しました。その延長線上で遺伝子解析を主に行っていた福永研究室に所属しました。県立広島大学で得た知識は、民間の種苗会社や国立研究所において研究を行うための大切な基盤になっています。

 

Q 他の都道府県から庄原キャンパスに来られていかがですか?離れても広島への思いは?

 大学受験に合格した後、家を探しにはじめて庄原市を訪れたときは、すごい田舎と驚きました。電車は数時間に1本しかなく、市内はファミレスがありませんでした。そのため、これから4年間暮らしていけるのかすごく不安でした。遊ぶ場所が少ないということは、どこかへ行くよりも友人の家で集まることが私の日常になったため、距離の近い人間関係を築くことができました。広島県から離れてしばらく経ちますが、時々友人に会いに行きます。

 

Q 最後に何かひとこと

 庄原キャンパスでの4年間は、自由に使える時間が多いと思います。その使い方は人それぞれで遊びに使うも、勉強に励むのも良いと思います。その時に得た経験は必ず将来役に立つと思いますので、色々と新しいことにチャレンジしてください。私はQSTに所属していますが、将来的に量子ビームを利用した突然変異体を用いて県立広島大学、広島大学及び農研機構とも共同研究を行いたいと考えています。

山谷浩史さんの研究業績 (researchmap) 

QST設備

QSTの量子ビーム(イオンビーム)照射装置です。上方から量子ビームをサンプル(植物種子など)にあてて、突然変異を誘発させます。

岩岡裕二さん(岡山県立大学 保健福祉学部 栄養学科 助教, 生命環境学部生命科学科卒)

岩岡さん

岩岡裕二さん(広島県立広島井口高等学校卒, 生命環境学部生命科学科2011年卒業, 総合学術研究科 生命システム科学専攻 博士課程後期2018年修了 田井研究室(現 徳島大学))​​

Q 今はどういうお仕事をされてますか?

 2018年に庄原キャンパスの田井教授(現 徳島大学)の研究室で博士号を取り、現在は岡山県立大学 保健福祉学部 栄養学科 食品化学研究室で助教として機能性ポリフェノール成分の研究を行う傍ら、学生実験で学生を指導しています。ポリフェノールは抗酸化作用など多くの作用を示し、種々の疾病を予防する機能性成分として近年注目されています。タンニンやフラボノイドなどの名前を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これらはすべてポリフェノールの一種になります。私は現在、がんや動脈硬化などの疾病の一因とされる糖化反応を阻害する作用(抗糖化作用)を示すポリフェノール成分を天然物から探索する研究を主に行っています。最近、食品企業との共同研究で食品素材であるトウビシ果皮エキスから抗糖化作用を持つ成分を単離・同定し、その成果を論文発表することができました。また、この論文発表によりトウビシ果皮エキスの機能性表示食品としての開発に貢献することができました。研究成果が人々の健康寿命の延伸に少しでも貢献できればと思い、日々研究しています。

 

Q 庄原キャンパスでの学生時代はどういうふうに過ごされましたか?

 学部3年次まではとにかく生活の中心が部活動(水泳部)でした。練習に遊びにメリハリがしっかりとした部活で楽しかったことを覚えています。他大学や他キャンパスの水泳部との交流も多くあり、部活動を通じて人と関わる機会が多かったので、コミュニケーション力も自然と養われたと思います。アルバイト(飲食系)でも大学の先輩や後輩との交流があり、庄原キャンパスのフットサル大会にアルバイト仲間で出場したこともあります。研究室に配属されてからは研究が生活の中心になりましたが、研究以外にも研究室の先輩や後輩と鍋パーティーなどをしたり、たくさん交流する機会がありました。また、教育に興味があったため、教職課程を履修し、教員免許も取得しました。教育実習では指導教員の授業を見学させて頂いたり、自身で授業を行うなど、実際の教育現場の雰囲気を肌で感じることができ、とても貴重な経験をさせて頂きました。

 

Q 庄原キャンパスで学んだことは今のお仕事などにどのようにいかせてますか?

 私は卒業論文から博士論文の研究まで一貫してビタミンCの研究を行い、研究に対する考え方や実験手法のエッセンスは田井教授から教わりました。修士論文までの研究では主に化学反応を主体とした実験をしていましたが、博士論文の研究ではこれに加えて、タンパク質に着目した実験にチャレンジしました。タンパク質の取り扱いや文献の調査などほとんどが一からで苦労しましたが、その分、博士論文の研究成果を論文発表した時の達成感は修士論文までの研究と比べ物にならない程大きかった事を覚えています。この時の苦労や悩んだ経験は現在行っているポリフェノールの研究でも活かされていると思います。また、現在の職場では分析化学、生化学、微生物学など複数の分野の学生実験の担当していますが、実習で使用するほとんどの実験機器が庄原キャンパスで見た事、触れた事があるものばかりで、その経験が実習でかなり役に立っています。

 

Q 庄原キャンパスで学んで他の県で就職してますが広島への思いは?

 今の職場は岡山県の総社市に位置しており、観光地で有名な美観地区のある倉敷市に近いです。そのため、倉敷に行けばお店も多く、正直便利なことも多いです。しかし、住めば都で学生時代の色々な思い出とともに庄原を懐かしく思うことが今もあります(博士課程修了まで実に10年間住んでいました、人生の約1/3は庄原です)し、今でも大学時代の友人と、オンライン飲み会をしては思い出にふけっています。私自身は広島県出身で生粋のカープファンですが、岡山ではほとんどテレビ中継をしていないので広島で毎日のようにテレビ中継していたのを懐かしく思いながら、スマホで毎試合結果をチェックしてます。また、広島に帰ったらかなりの高確率でお好み焼きを食べます(ちなみにうどんよりもそば派です)。

 

Q 最後に何かひとこと

 私自身、修士課程を卒業した後に、ジェネリック医薬品の原薬を製造する企業に就職しましたが、研究を忘れられず、就職して1年で仕事を退職し、博士課程に進学しました。期待に胸を膨らませて研究の世界に飛び込んだものの、思うように研究成果がでないこともたくさんありました。そのような中で、研究室の先生やメンバーをはじめとした多くの人に助けてもらい、結果的に博士課程を修了して、今の仕事に就くことができました。庄原は生活には多少不便な環境かもしれませんが、むしろこの環境が助け合いなど人間関係のつながりの大切さを教えてくれると思います。大学時代はじっくり自身と向き合い、人間関係をつくり、やりたいことを見つける貴重な時間です。やりたいことが見つけにくい人も少しずつでも何でもいいからチャレンジしてみてください、積み重ねれば視野が少しずつ広くなって意外なやりたい事が見つかるかもしれません。ちなみに、大学で教員をするなんて大学に入学した時は私は考えてもいませんでした。

岩岡裕二さんの研究業績 (researchmap)

藤井幹子さん (ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 勤務、生命環境学部生命科学科卒業)

藤井さん

藤井幹子さん(兵庫県立長田高等学校卒業.生命環境学部生命科学科2011年卒業.生命システム科学専攻博士前期課程2013年修了(達家研究室)).

Q どういうお仕事をされていますか?

 大学卒業後、新卒で入社をしたのは研究者の就労支援を行う人材サービスの会社で、私は主に新卒採用業務を行っていました。大学の就職課や就職担当の先生、従業員の卒業研究室へ足を運んで会社説明会を行ったり、面接官として学生の面接を行ったり、内定者懇親会の企画などもさせていただきました。こちらの会社で4年半ほど働いたのちに、人事領域の業務経験をもっと広げていきたいと思い現在の会社へ転職しました。

 現在はバイオベンチャー企業で人事総務のお仕事をしています。採用業務のみならず、従業員の健康管理、給与計算、評価制度構築など、人事総務に関するあらゆる業務を経験させていただいています。

 

Q 庄原キャンパスでの学生時代はどういうふうに過ごされましたか?

 1~2年生の時は時間に余裕があったので、アルバイトをしたり、サークル活動に参加したり、寮の友達とたくさん遊びに行きました。特にサークルでは、ファーマーズハンズという地元の農家の方のお手伝いをする組織に所属をしており、田植えや稲刈り、原木椎茸の植菌、たい肥を撒く仕事など様々な体験をさせていただきました。

 3年生からは研究室へ入り、ほぼ毎日朝から晩まで研究活動をする日々でした。私は生命科学の色々な知識が学べると思いがんの基礎研究を行っている研究室に入りました。研究室では慣れない実験ばかりで最初はとても苦労しましたが、4年間の研究室生活でたくさんの知識と経験を得ることができました。いくつかの論文にも名前を載せていただくことができました。

 

Q 庄原キャンパスで学んだことは今のお仕事などにどのようにいかせてますか?

 現在は、バイオベンチャー企業で働いているため、少しは大学時代に学んだことがいかされているのではないかと思います。採用面接をする際、研究員の方々と話しをする際など、専門用語もたくさん出てきますが、研究内容や実験手技の話題になったときに、大学・大学院で自分も扱ったことのある機械の話が出てくると少し嬉しくなります。自分が研究活動で苦労をした経験があるからこそ、社員の苦労や努力を少しは理解できるのではないかと思いますし、今後は自分だからこそ出来る人事担当者としての役割を見つけていけたらと考えています。

 

Q 他の都道府県から庄原キャンパスに来られていかがですか?離れても広島への思いは?

 庄原へ来てとてもよかったなと思うことは、自然が豊かで蛍や星がたくさん見られたことです。毎日あれほどの自然を体感しながら学生生活を過ごせたことはとても価値のあることだと思っています。また、多くの学生が大学の近くで下宿をしていたため、友達との関わりは他大学へ進学するよりも深まったのではないかと思います。今でも大学の友達とは連絡を取ることがありますが、各方面で活躍していることを聞いては刺激を受けています。勉強以外でも多くの経験を積むことができて、庄原キャンパスでの学びは一生の宝だと思っています。

 

Q 最後に何かひとこと

 私は庄原キャンパスへ来て、教授にも恵まれて自分のしたい研究をすることが出来ました。友達にも恵まれてとても楽しい学生生活をおくることが出来ました。多くの大学がある中で、きっとどの大学を選んでもそれぞれの環境で楽しむことは出来るのかもしれませんが、私は庄原キャンパスでしか経験することが出来なかったことをたくさん経験することが出来て、この大学を選んでよかったと思っています。

 大学は自由度が高いゆえに、同じ大学にいても人それぞれ経験していることは違うと思います。自分でしたいことを見つけて自分から積極的にチャレンジできる環境が庄原キャンパスにはあると思うので、是非色々なことに目を向けてチャレンジしてください。

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  今回,ご紹介したように、大学で学び本学や他大学の大学院に進み、研究所の研究員や大学教員、あるいは企業の研究関係の人事のお仕事につかれている卒業生がいます。学会でも本学教員と顔をあわせたり、共同研究の可能性がうまれつつあります。庄原キャンパスを起点にさまざまな場所でアカデミックなネットワークがうまれてきています。